「1分以上息が止まる」と言われても、なぜ窒息しないのか?
睡眠時無呼吸症候群の患者さんの中には、寝ている間に1分以上呼吸が止まる方も少なくありません。
これを聞いて、「そのまま窒息して亡くなるのでは?」と思う方もいるかもしれません。
しかし、通常、呼吸が完全に停止した状態が続いて命に関わるような状況には至りません。
理由は、睡眠中でも体が生命を守る仕組みを持っているからです。
無呼吸が続くと、酸素濃度の低下により脳が警報を発し、覚醒や呼吸を再開させる信号を送ります。
このため、無呼吸が長時間続いても、完全に呼吸が止まり続けることは稀です。
無呼吸が「余命を短くする」とはどういうこと?
しかし、安心するのは早いです。
無呼吸が繰り返されることで、「夜間低酸素血症」という状態が慢性的に続きます。
酸素不足が体に与える影響は甚大で、以下のような問題が生じることがわかっています。
- 心臓血管への負担
睡眠中に低酸素状態が続くと、心拍数が乱れたり、高血圧、動脈硬化が進行します。これにより、心筋梗塞や脳卒中のリスクが増加します。 - 代謝への悪影響
夜間低酸素はインスリン抵抗性を悪化させ、糖尿病の進行を助長する可能性があります。 - 全身の疲労と免疫低下
質の高い睡眠が取れず、日中の疲労感が蓄積します。また、慢性的な低酸素状態は免疫機能の低下にもつながります。
実際、複数の研究によれば、睡眠時無呼吸症候群を適切に治療せず放置した場合、寿命が短くなるリスクがあるとされています。
改善方法はあるのか?
幸い、睡眠時無呼吸症候群は適切な診断と治療でリスクを減らすことができます。
代表的な治療法には以下のものがあります:
- CPAP(持続陽圧呼吸療法)
寝ている間にマスクを装着し、気道に空気を送り込むことで無呼吸を防ぎます。 - 減量
肥満が原因で気道が狭くなっている場合、体重を減らすことが効果的です。 - 口腔内装置
顎の位置を調整するマウスピースで気道を確保します。 - 生活習慣の見直し
アルコールの摂取制限や禁煙も、無呼吸の頻度を減らすのに役立ちます。
早期発見と治療が大切です
睡眠時無呼吸症候群は、無自覚で進行することが多いため、以下の症状がある場合は早めにご相談ください。
- 寝ている間に激しいいびきをかく
- 日中の異常な眠気
- 朝起きたときの頭痛
- 集中力や記憶力の低下
睡眠中の酸素不足は、気づかないうちに健康をむしばんでいます。
適切な治療で、より良い生活を取り戻しましょう。
気になる方は、ぜひ一度クリニックでご相談ください。
やまぐち呼吸器内科・皮膚科クリニック
山口裕礼