授乳中の喘息管理について:赤ちゃんのために安全に治療を続ける
授乳期は赤ちゃんとの大切な時間が始まる一方で、喘息をお持ちの方にとっては、治療を続けながら赤ちゃんに安全な母乳を与えられるかという不安があるかもしれません。
今回は、授乳中の喘息治療のポイントや注意点についてお伝えします。
授乳中の喘息治療は必要?
授乳中でも喘息治療を続けることは非常に重要です。
喘息が悪化すると、母体の健康に影響を与えるだけでなく、赤ちゃんとの日常生活にも支障をきたす可能性があります。
- 母体への影響:喘息発作による呼吸困難や酸素不足は、母乳の供給にも影響を及ぼすことがあります。
- 赤ちゃんへの影響:喘息を適切にコントロールすることで、赤ちゃんへの影響を最小限に抑えることができます。
授乳中に使用できる薬について
授乳中でも安全に使用できる喘息治療薬は多くあります。
母乳を通じて赤ちゃんに薬が移行する可能性はありますが、多くの場合、その量はごくわずかで問題ありません。
- 吸入ステロイド(ICS)
安全性:吸入ステロイドは母乳を通じて赤ちゃんに移行する量が非常に少なく、安全性が高いとされています。
- 気管支拡張薬(β2刺激薬)
安全性:短時間作用型(SABA)は授乳中でも安全です。喘息発作時に使用できます。
- 抗ロイコトリエン薬
安全性:母乳への移行量は少なく、安全に使用できます。
- 経口ステロイド
例:プレドニゾロン
安全性:発作時の短期間の使用であれば問題ないとされています。高用量の場合は、授乳後数時間あけて使用することが推奨されます。
授乳中に注意すべきこと
- 医師に薬の使用を相談:授乳中に使用する薬については、必ず呼吸器内科医に相談してください。必要に応じて薬の種類や用量を調整します。
- 授乳のタイミングを工夫:薬を服用する場合、授乳直後に薬を使用することで、赤ちゃんへの薬の影響を最小限に抑えることができます。
- 生活環境を整える:授乳中は赤ちゃんの健康も気にかかる時期です。ダニやほこり、ペットの毛など喘息を悪化させる環境要因を取り除くことが大切です。
- 体調の変化に注意:産後は体調が不安定になりやすい時期です。疲労やストレスが喘息発作を引き起こすことがあるため、無理をせず休息をとりましょう。
授乳中によくある質問
Q1. 授乳中に薬をやめた方がいいですか?
→ 薬をやめることで喘息が悪化すると、母体の健康に影響を与えます。
多くの喘息治療薬は授乳中も安全に使用できるため、自己判断で中止せずに医師に相談してください。
Q2. 母乳をあげていると赤ちゃんに喘息のリスクはありますか?
→ 母乳は赤ちゃんの免疫力を高める効果があり、喘息の予防にもつながる可能性があります。
安心して授乳を続けてください。
Q3. 授乳中の疲労で喘息が悪化することはありますか?
→ はい、疲労やストレスは喘息悪化の要因となることがあります。
家族や周囲のサポートを受けながら、できるだけ体を休めるようにしましょう。
授乳中は、母体と赤ちゃんの健康を両立させるために、喘息治療を適切に続けることが重要です。
使用できる薬は多く、安全に治療を行うことができます。
不安なことがあれば、遠慮せずに医師に相談してください。
あなたと赤ちゃんが健康で幸せな授乳期を過ごせるよう、全力でサポートします。
山口裕礼
やまぐち呼吸器内科・皮膚科クリニック
投稿者プロフィール
- 2017年1月、希望が丘(神奈川県横浜市)にて、やまぐち呼吸器内科・皮膚科クリニックを開院しました。
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