アトピー性皮膚炎とマラセチア:症状悪化の原因と対策
こんにちは、やまぐち呼吸器内科・皮膚科クリニックの山口裕礼です。
今日は、アトピー性皮膚炎と「マラセチア」というカビの一種との関係についてお話しします。
マラセチアは私たちの肌に常在する真菌ですが、特定の条件下でアトピー性皮膚炎の悪化要因になることがあります。
この記事では、マラセチアが引き起こす影響とその対策について解説します。
マラセチアとは?
マラセチアは、皮脂をエネルギー源とする真菌(カビ)で、私たちの皮膚の常在菌として存在しています。
通常は無害ですが、皮脂の分泌が増えたり、免疫バランスが崩れたりすると、炎症やかゆみを引き起こすことがあります。
特に、アトピー性皮膚炎の患者さんでは、このマラセチアに対する免疫反応が過敏になりやすいことが知られています。
マラセチアがアトピー性皮膚炎に与える影響
- 炎症の悪化:マラセチアが皮膚上で増殖すると、免疫反応が活発化し、赤みやかゆみが増加します。
- 特定部位の悪化:特に顔や首、上胸部など、皮脂腺が多い部位で症状が顕著になることがあります。
- アレルギー反応の誘発:マラセチアに対するIgE抗体が増加し、アトピー性皮膚炎の症状をさらに悪化させることがあります。
マラセチア関連湿疹(脂漏性皮膚炎との関係)
マラセチアは、アトピー性皮膚炎以外にも「脂漏性皮膚炎」と呼ばれる病態に関与しています。
脂漏性皮膚炎は、主に皮脂分泌が多い部位で起こる炎症性疾患ですが、アトピー性皮膚炎を持つ方ではこれらが重なるケースもあります。
症状としては、鱗屑(ふけのようなもの)を伴う赤みやかゆみが特徴的で、治療が遅れると慢性的な症状に進行することがあります。
マラセチアと重症化のリスク
マラセチアがアトピー性皮膚炎を悪化させるメカニズムは、皮膚のバリア機能の低下と免疫過敏が絡み合っています。この結果、以下のようなリスクが高まります。
- 慢性化:マラセチアによる炎症が繰り返されると、皮膚の炎症が慢性化し、治療が難しくなることがあります。
- 二次感染:炎症部位を掻くことで皮膚が傷つき、細菌や他の病原体による感染リスクが増加します。
- 研究の根拠:マラセチアに対するIgE抗体や好酸球の増加が確認されており、これが症状の悪化に寄与していることが報告されています。
マラセチア対策のポイント
マラセチアを完全に排除することは不可能ですが、以下の対策で影響を軽減できます。
- 皮膚を清潔に保つ:皮脂が多い部位は、適切な洗浄剤を使い清潔を保つことが重要です。
- 抗真菌薬の使用:医師の処方による抗真菌薬(クリームやシャンプーなど)を使用することで、マラセチアの増殖を抑えることができます。
- 保湿ケア:肌のバリア機能を保つために、適切な保湿を行いましょう。
- 掻き壊しを防ぐ:かゆみが強い場合は、ステロイド外用薬や抗ヒスタミン薬で症状を抑え、皮膚を掻き壊さないようにしましょう。
マラセチアとの向き合い方
アトピー性皮膚炎は、マラセチアの影響を受けやすい疾患ですが、適切な治療と日常ケアで症状を改善することが可能です。
特に症状が顔や胸部、首に集中している場合は、マラセチアの関与が疑われるため、早めに専門医に相談してください。
やまぐち呼吸器内科・皮膚科クリニックでは、アトピー性皮膚炎や関連する皮膚疾患の診療を行っています。
気になる症状がある方はお気軽にご相談ください。
やまぐち呼吸器内科・皮膚科クリニック 山口裕礼