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妊娠中期の喘息管理について:安定した妊娠生活を送るために

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妊娠中期の喘息管理について:安定した妊娠生活を送るために

妊娠中期(妊娠13~27週)は、つわりが落ち着き、妊娠が安定する時期です。

この時期は体調が比較的良いと感じる方が多い一方で、喘息をお持ちの方にとっては、引き続き適切な管理が必要な時期でもあります。

今回は、妊娠中期における喘息管理のポイントや注意点をご紹介します。

妊娠中期に喘息管理が重要な理由

妊娠中期は胎児が急成長し、母体への負担が徐々に増していく時期です。

この時期に喘息がコントロールされていないと、以下のリスクが考えられます。

  • 母体への影響:肺が圧迫されることで呼吸が浅くなりやすく、喘息の症状が悪化する可能性があります。
  • 胎児への影響:母体の酸素供給が不十分になると、胎児の成長に影響を及ぼす可能性があります。

妊娠中期は妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群のリスクも高まる時期です。

喘息の発作を防ぎ、母体と胎児の健康を守るためには、適切な治療と管理が重要です。

妊娠中期の薬の使用について

妊娠中期も、引き続き安全に使用できる喘息治療薬があります。

薬を自己判断で中止することは避け、医師と相談しながら治療を続けましょう。

  • 吸入ステロイド(ICS)

    安全性:吸入ステロイドは妊娠中期も安全に使用できます。炎症を抑え、喘息のコントロールを維持するために重要な薬です。

  • 気管支拡張薬(β2刺激薬)

    安全性:発作時に使用する短時間作用型(SABA)は、症状を速やかに緩和するために適しています。

  • 抗ロイコトリエン薬

    安全性:妊娠中期も使用可能ですが、吸入薬で十分な管理ができている場合は、必ずしも必要ではない場合があります。

  • 経口ステロイド
    例:プレドニゾロン
    安全性:発作時に短期間での使用は安全とされています。必要な場合は医師の指導のもとで使用してください。

妊娠中期に注意すべきこと

  1. 胎動を感じたら注意深く観察を:胎動が感じられるようになる妊娠中期は、胎児の健康状態を知る目安となります。
  2. 適度な運動を心がける:ウォーキングなど、無理のない範囲で運動を取り入れることで、呼吸機能の向上やストレス軽減につながります。ただし、息苦しさを感じたらすぐに中止してください。
  3. 感染症予防:妊娠中期は感染症にかかるリスクも高まります。インフルエンザや風邪の予防を徹底しましょう。特に喘息がある方は、感染症が症状を悪化させる要因となるため、早めの予防接種やマスク着用を心がけてください。
  4. 食事と栄養管理:鉄分や葉酸をしっかり摂りながら、栄養バランスの良い食事を心がけてください。喘息症状を悪化させるアレルゲンが含まれている食品にも注意を払いましょう。

妊娠中期によくある質問

Q1. 妊娠中期に喘息が悪化したらどうすればいいですか?
→ 発作が起きた際は、まず気管支拡張薬を使用し、症状を緩和させてください。

その後、呼吸器内科医を受診し、治療計画を見直します。

Q2. 運動しても大丈夫ですか?
→ 適度な運動は推奨されますが、無理をせず、自分のペースで行いましょう。

運動中に息苦しさや喘鳴があればすぐに中止し、医師に相談してください。

Q3. 妊娠中期でもインフルエンザワクチンを受けられますか?
→ はい、妊娠中期でもワクチン接種が安全に行える時期です。

インフルエンザワクチンを受けることで、感染症から母子を守ることができます。

妊娠中期は、胎児が急成長する重要な時期であり、母体にとっても安定した妊娠生活を送るためのポイントが多い時期です。

喘息をしっかり管理することで、母子ともに健やかな日々を過ごすことができます。

妊娠中の不安や疑問があれば、遠慮せずに医師に相談してください。あなたと赤ちゃんの健康を全力でサポートします。

山口裕礼
やまぐち呼吸器内科・皮膚科クリニック

投稿者プロフィール

院長:山口裕礼(やまぐちひろみち)
院長:山口裕礼(やまぐちひろみち)
2017年1月、希望が丘(神奈川県横浜市)にて、やまぐち呼吸器内科・皮膚科クリニックを開院しました。