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妊娠初期の喘息管理について:母子の健康を守るために

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妊娠初期の喘息管理について:母子の健康を守るために

妊娠が判明し、喜びとともにさまざまな不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。

特に喘息をお持ちの方にとって、「赤ちゃんに影響がないように治療を続けられるのか」「薬をどうすればよいのか」といった疑問は重要なテーマです。

今回は、妊娠初期に知っておきたい喘息管理のポイントをご紹介します。

妊娠初期の喘息治療が大切な理由

妊娠初期(妊娠0~12週)は、胎児の主要な臓器が形成される重要な時期です。

この時期に喘息がコントロールされていないと、胎児への酸素供給が不足する可能性があります。

  • 母体への影響:喘息の発作やコントロール不良は、妊娠悪阻(つわり)の悪化や全身の負担を増加させる可能性があります。
  • 胎児への影響:酸素不足が続くと、胎児の成長に影響を及ぼすリスクがあります。これを防ぐためには、喘息を安定させることが重要です。

妊娠初期の薬の使用について

妊娠中でも使用可能な薬は多くあります。

赤ちゃんの健康を守るためにも、自己判断で薬を中止することは避け、医師と相談しながら治療を続けましょう。

  • 吸入ステロイド(ICS)
    安全性:吸入ステロイドは妊娠中でも使用が推奨される薬です。特にブデソニドは、胎児への影響が少ないとされ、妊娠中も広く使われています。
  • 気管支拡張薬(β2刺激薬)
    安全性:喘息発作時や症状が出た際に使用する短時間作用型(SABA)は、妊娠中でも安心して使用できます。
  • 抗ロイコトリエン薬
    例:モンテルカスト(シングレア)
    安全性:妊娠中も使用可能です。
  • 経口ステロイド
    例:プレドニゾロン
    安全性:発作時の短期間の使用は胎児への影響が少ないとされています。ただし、必要な場合のみ使用します。

妊娠初期に注意すべきこと

  • 定期的な通院:妊娠初期は体調の変化が激しい時期です。呼吸器内科医と産婦人科医の両方に定期的に通い、状態を確認することが重要です。
  • 発作の予防:
    • タバコの煙やダニなど、発作を誘発する環境を避ける。
    • インフルエンザや感染症に注意し、予防接種を検討する。
  • つわり時の吸入薬使用:つわりで吐き気がある場合でも、吸入薬の使用を継続してください。吸入薬は胃に負担をかけることがないため、つわり中でも安心して使用できます。どうしても難しければ医師に相談してください。
  • 妊娠初期によくある質問

    Q1. 妊娠がわかったので薬をやめた方がいいですか?
    → 自己判断で薬をやめるのは避けてください。

    喘息が悪化すると、胎児への酸素供給に影響を与える可能性があります。

    現在使用している薬の安全性について、医師に相談することが最善です。

    Q2. 妊娠初期に喘息の発作が起きたらどうすればいいですか?
    → 発作時には、気管支拡張薬を使用して症状を緩和させてください。

    その後、必ず呼吸器内科医を受診し、治療の見直しを検討します。

    Q3. 妊娠初期に感染症を防ぐにはどうすればいいですか?
    → 手洗いやマスクの着用、予防接種(インフルエンザワクチンなど)を検討してください。

    感染症は喘息の悪化を招く可能性があるため、注意が必要です。

    妊娠初期は、母体と胎児にとって非常に重要な時期です。

    喘息治療を継続し、発作を防ぐことが母子の健康を守る鍵となります。

    不安や疑問がある場合は、遠慮せずに医師に相談してください。妊娠初期を安心して過ごせるよう、私たちも全力でサポートします。

    山口裕礼
    やまぐち呼吸器内科・皮膚科クリニック

    投稿者プロフィール

    院長:山口裕礼(やまぐちひろみち)
    院長:山口裕礼(やまぐちひろみち)
    2017年1月、希望が丘(神奈川県横浜市)にて、やまぐち呼吸器内科・皮膚科クリニックを開院しました。