妊娠後期の喘息管理について:出産に向けた準備と安心のために
妊娠後期(妊娠28週以降)は、赤ちゃんの誕生が近づき、期待とともに体への負担も増える時期です。
喘息をお持ちの方にとっては、この時期に症状を安定させ、安心して出産を迎えるための準備が重要です。
今回は、妊娠後期の喘息管理における注意点や、よくある疑問について解説します。
妊娠後期に喘息管理が重要な理由
妊娠後期は、子宮の大きさが増すことで横隔膜が押し上げられ、肺の働きに影響を与えることがあります。
また、母体への循環血液量の増加に伴い、心臓や呼吸器への負担が大きくなります。
- 母体への影響:呼吸が浅くなり、息切れや喘鳴(ぜんめい)を感じる方が増える時期です。
- 胎児への影響:妊娠後期は赤ちゃんが急成長する時期であり、母体からの酸素供給が胎児の健康に直接影響します。
喘息をコントロールすることで、母体と赤ちゃんの両方の健康を守ることができます。
妊娠後期の薬の使用について
妊娠後期も引き続き、多くの喘息治療薬が安全に使用できます。治療を中断せず、医師の指導のもとで適切に使用しましょう。
- 吸入ステロイド(ICS)
安全性:吸入ステロイドは妊娠後期でも最も安全性が高い薬とされており、引き続き使用可能です。
- 気管支拡張薬(β2刺激薬)
安全性:発作時に使用する短時間作用型(SABA)は妊娠後期でも安全です。
- 抗ロイコトリエン薬
安全性:妊娠後期でも使用可能です。
- 経口ステロイド
例:プレドニゾロン
安全性:発作時に必要があれば使用可能ですが、短期間にとどめることが推奨されます。
妊娠後期に注意すべきこと
- 呼吸の変化を見逃さない:妊娠後期は自然な息切れを感じることが増えますが、喘息の症状との区別が必要です。症状が悪化した場合は早めに医師に相談してください。
- 出産計画を立てる:分娩時に喘息発作が起きる可能性を考慮し、呼吸器内科医が出産時の注意点と発作時の管理計画を立てることが重要です。
- 体を休める:妊娠後期は体の負担が大きくなるため、無理をせずに休息を優先してください。疲労は喘息発作を引き起こす原因になることがあります。
- 感染症の予防:出産を控える時期だからこそ、風邪やインフルエンザなどの感染症に注意が必要です。予防接種や感染対策を徹底しましょう。
妊娠後期によくある質問
Q1. 分娩中に喘息の発作が起きたらどうすればいいですか?
→ 分娩中の喘息発作はまれですが、必要に応じて気管支拡張薬を使用します。
また、出産計画の中で、医療チームが発作に対応できる準備を整えておくことで安心です。
Q2. 呼吸が浅くなり息切れが強いのですが、これも喘息の症状ですか?
→ 妊娠後期の息切れは通常の妊娠経過で起こることが多いですが、喘鳴や胸の圧迫感がある場合は喘息の可能性があります。
医師に相談してください。
Q3. 出産後も同じ治療を続けられますか?
→ 基本的に出産後も同じ治療を継続できます。
ただし、授乳中の薬の安全性について医師に確認してください。
妊娠後期は、出産に向けて母体と胎児が変化する大切な時期です。
喘息を適切に管理することで、安心して出産を迎える準備が整います。
不安や疑問があれば、医師に相談することをためらわず、適切な治療を続けてください。
母子ともに健康で安全な出産を迎えられるよう、全力でサポートします。
山口裕礼
やまぐち呼吸器内科・皮膚科クリニック
投稿者プロフィール
- 2017年1月、希望が丘(神奈川県横浜市)にて、やまぐち呼吸器内科・皮膚科クリニックを開院しました。
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