🌿上司の方へ|新入職員との接し方

🌿「最近の若者は分からない」で終わらせないために
新入職員を見ていて、こう感じることはないでしょうか。
「電話が苦手そうだ」
「報告が遅い」
「パソコン操作に思ったより慣れていない」
「上司との距離の取り方が分からないように見える」
「こちらは普通に言ったつもりでも、かなり傷ついているようだ」
そうした場面に出会うと、つい「最近の若者は分からない」という言葉が浮かぶかもしれません。
けれど、その一言で片づけてしまうには、今の若い世代はあまりにも多くのものを背負っています。
コロナ禍で人間関係づくりの機会が減ったこと。
スマホ中心の環境で育ち、電話や対面の細かなやり取りに慣れる機会が少なかったこと。
勉強量は多くても、実社会での雑談・調整・失敗の乗り越え方を練習する場が少なかったこと。
さらに、表面上は元気に見えても、もともとメンタルの不調を抱えている方もいます。
あるいは、社会に出てから初めて、緊張、不安、抑うつ、不眠などが表面化する方も少なくありません。
この文章は、新入職員を甘やかすためのものではありません。
反対に、職場で人を育てる側が、時代の背景を理解しながら、どう接すればよいかを整理するためのものです。
📌 目次(クリックで移動できます)
🌱1.「最近の若者は分からない」で止まらないために
上司の立場に立つと、若い職員の言動が理解しにくいことがあります。
こちらにとって当たり前のことが通じない。
常識だと思っていたことが伝わらない。
それは確かに、日々の現場では大きなストレスになります。
ただ、ここで立ち止まって考えたいのです。
「分からない」のは若者のせいだけなのか。
あるいは、育ってきた時代、社会、家庭、教育環境が大きく変わっているのではないか。
人を育てる立場にある私たちは、相手の未熟さだけを責めるのではなく、相手がどういう土壌で育ってきたかを理解する必要があります。
理解することは、甘やかすことではありません。
適切な育て方を選ぶための、土台です。
🕰️2.今の新入職員が育ってきた時代背景
今の若い世代は、私たち親世代・上司世代とは違う環境で育ってきました。
情報量は圧倒的に多い。
競争は早くから始まる。
比較は学校の中だけでなく、SNSを通じて常に可視化される。
失敗した時に、静かにやり直すよりも、すぐに評価や反応にさらされやすい。
そうした中で、勉強量そのものは確実に増えてきました。
勉強ができる、知識量が多い、大学受験を乗り越えてきた。
それ自体は大きな努力の結果です。
しかしその一方で、感情の扱い方、人間関係のこじれへの対処、失敗後の立て直し、気まずい会話を乗り越える力が十分に育つ前に、次の課題へ次の課題へと進まされてきた面もあります。
つまり、知識は多いのに、対人ストレスには弱い。
理解力は高いのに、実務で固まりやすい。
そう見える若者がいても、不思議ではありません。
😷3.コロナ禍世代に起きた人間関係の空白
この世代を語るとき、コロナ禍の影響は外せません。
本来なら、学生時代に経験していたはずのことがあります。
友人との距離感。
対面での雑談。
サークルやアルバイトでの上下関係。
集団の中で気まずさを処理する練習。
失敗して落ち込んで、でも翌日また顔を合わせる経験。
それらが減ったまま社会に出てきた方は少なくありません。
オンライン授業、接触回避、短いやり取り、必要最低限の人間関係。
そうした時間を数年過ごした人にとって、職場の濃い人間関係は、想像以上に負荷が高いことがあります。
ですから、職場でのぎこちなさを見たときに、「礼儀がない」「根性がない」とだけ判断しないこと。
その背景に、経験不足ではなく、経験の機会そのものの欠如があるかもしれません。
📱4.スマホ世代なのに電話もパソコンも苦手、はなぜ起きるのか
「スマホは使いこなすのに、なぜ電話が苦手なのか」
「デジタル世代なのに、なぜパソコン作業に弱いのか」
これは現場でよく聞く疑問です。
ここで誤解しやすいのは、スマホが得意=情報機器全般が得意、ではないという点です。
スマホは直感的で、短時間で、個人最適化された道具です。
一方で、職場の電話は、相手の表情が見えず、即時に反応を求められ、言い間違いがプレッシャーになる道具です。
また、パソコンは業務ソフト、ファイル管理、ショートカット、複数画面の処理など、別の訓練が必要です。
つまり彼らは、デジタルに弱いのではなく、職場特有の道具の使い方にまだ慣れていないだけのことがあります。
ここを「そんなこともできないのか」で終わらせると萎縮します。
「いま練習中なんだな」と捉え直して、段階を踏んで教えることが大切です。
🎓5.優秀に見えるのに折れやすいことがある理由
「いい大学を出ているのに、なぜこんなに打たれ弱いのか」
そう感じることもあるかもしれません。
けれど、学力の高さと、自己安定感の強さは必ずしも一致しません。
受験をくぐり抜けてきた人ほど、正解のある世界で努力して評価される経験は豊富です。
しかし社会に出ると、曖昧な指示、人によって違う価値観、理不尽さ、答えのない調整が増えます。
ここで急に不安定になる人は珍しくありません。
また、家庭や学校で「頑張れば認められる」「成果が出れば価値がある」と学んできた人ほど、職場で小さな否定を受けたときに、存在そのものを否定されたように感じやすいことがあります。
優秀であることと、傷つかないことは違う。
ここを上司が理解しているだけで、若い職員への接し方は大きく変わります。
👨👩👧6.親世代・社会がつくってきた背景
少し厳しい言い方になりますが、今の若者を見て「弱い」「扱いづらい」と感じるとき、その一部は私たち大人が作ってきた現実でもあります。
よい学校へ。
よい成績を。
将来困らないように。
そう願って、勉強をさせ、競争に備えさせ、効率よく生きることを教えてきました。
それ自体は愛情でもあります。
しかし一方で、失敗しても大丈夫という感覚、寄り道する余白、人に頼る練習、心が折れたときに立ち直る時間を削ってきた面も否定できません。
会社にとって都合がよい能力、社会に適応しやすい知識、効率的な成果。
それを優先してきた結果、内面が育つ前に実績だけを求められる若者も増えました。
だからこそ、いま現場にいる上司は、単に評価者であるだけでなく、人を再び育て直す最後の大人になることがあります。
⚠️7.上司がまずやってはいけない関わり方
育てたいと思うほど、ついやってしまいがちな関わり方があります。
① 昔の自分と比較して叱る
「自分の若い頃はもっとできた」
その比較は、相手の成長にはほとんど役立ちません。時代も環境も違います。
② 曖昧に指示して、察する力だけを求める
察する力は大切ですが、最初から高く求めすぎると、萎縮か混乱を招きます。
③ 人格まで評価してしまう
「向いていない」「社会人としてだめだ」などの言葉は、行動修正ではなく自己否定につながります。
④ 人前で恥をかかせる
見せしめは、一時的に従わせても、学習意欲を壊します。
⑤ 不調を気合いで乗り切らせようとする
メンタル不調の入口にいる若者に「甘えるな」だけで返すと、表面上は黙っても、内側では深く傷ついていきます。
🛠️8.新入職員への実践的な接し方
では、上司は実際にどう接すればよいのでしょうか。
① 最初に「安心」をつくる
若い職員は、できるかどうか以前に、「ここで失敗しても大丈夫か」を見ています。
最初に安心があると、人は学びやすくなります。
② 指示は具体的に、区切って出す
一度に多くを伝えず、何を・いつまでに・どの形で、を明確に伝える。
これは甘やかしではなく、教育の基本です。
③ 電話・報告・相談は「型」で教える
「見て覚えて」は通用しにくい時代です。
例文、順番、言い回しをセットで教えると、急にできるようになることがあります。
④ 叱る前に事実確認をする
怠慢に見える行動が、実は不安や理解不足、フリーズ反応であることもあります。
まず何が起きていたかを聞くことです。
⑤ 小さな成功体験を積ませる
若い職員は、自信がないから動けないことがあります。
小さく任せて、小さくできたことを言語化して返す。これが土台になります。
⑥ 雑談を軽視しない
業務外の短いやり取りが、信頼関係の入り口になることがあります。
いきなり深く踏み込まず、天気、通勤、昼食、週末の過ごし方など、軽い会話からで十分です。
⑦ 「厳しさ」と「冷たさ」を混同しない
必要な指摘はしてよいのです。
ただし、人格を削る必要はありません。
成長を促す厳しさと、相手を萎縮させる冷たさは別物です。
🩺9.メンタル不調のサインにどう気づくか
若い職員の中には、もともと不安や抑うつを抱えている方もいますし、社会に出てから不調になる方もいます。
上司が診断をする必要はありません。
しかし、早めに気づくことはとても大切です。
たとえば次のような変化には注意が必要です。
- 表情が急に乏しくなる
- 遅刻や欠勤が増える
- 小さなミスが急に増える
- 相談が極端に減る
- 涙もろくなる、反応が鈍くなる
- 食欲不振、不眠、体調不良を繰り返す
- 「すみません」ばかり言う
- 自分を強く責める発言が増える
このとき大切なのは、追い込むことではなく、一度立ち止まって話を聴くことです。
必要なら、人事、産業保健、医療機関、相談窓口につなぐ。
上司ひとりで抱え込まず、支援の線をつくることが重要です。
🔥10.厳しさは必要、でも壊してはいけない
ここで誤解してほしくないのは、この記事は「若者には厳しくしてはいけない」と言いたいのではない、ということです。
仕事には責任があります。
医療も、企業も、組織も、甘いだけでは成り立ちません。
時には厳しい指摘も必要です。
できていないことを、できているとは言えません。
ただし、忘れてはいけないのは、育てるための厳しさと、壊すだけの圧力は違うということです。
人は、安心があるから挑戦できます。
信頼があるから指摘を受け止められます。
関係性があるから、厳しさが教育になります。
厳しいことを言う前に、相手との関係ができているか。
逃げ道のない圧になっていないか。
自分の苛立ちを教育にすり替えていないか。
そこを上司自身が点検する必要があります。
✨11.最後に|育てるとは、時代を理解して責任を持つこと
今の新入職員は、私たちの若い頃とは違います。
けれど、それは「だめになった」という意味ではありません。
育ってきた環境が違い、強みも弱みも違う、ということです。
知識量が多い。
情報処理は速い。
まじめで、傷つきやすく、空気に敏感。
そんな若者たちを前に、私たち上司世代ができることは何でしょうか。
それは、単に使いやすい人材を求めることではなく、一人の人間として育つ機会を職場で支えることではないでしょうか。
もしかしたら、今の若者を見て戸惑う気持ちの奥には、私たち自身の時代への戸惑いもあるのかもしれません。
けれど、だからこそ必要なのは決めつけではなく理解です。
嘆きではなく工夫です。
根性論ではなく、関わり方の更新です。
「最近の若者は分からない」
その一言で終わらせない上司が増えること。
それが、これからの職場を少しずつ変えていくはずです。
📝補足
本記事は一般的な職場での人材育成・コミュニケーションについての助言です。特定の診断を行うものではありません。強い不調が疑われる場合や、職場での対応だけでは難しい場合は、産業保健スタッフ、相談窓口、医療機関などと連携してご対応ください。
投稿者プロフィール

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からだ整えラボ
① 医学=呼吸器・アレルギー
② 生活=腸・温活・食・睡眠・肌
③ 幸福=働き方・環境・園芸
“病気を診るだけでなく、人をまるごと診たい”
——その思いを胸に、学びを続けています。
医学的根拠 × 生活習慣 × 心の豊かさ
三位一体の医療をめざしています。
資格:
<医学・医療>医学博士、日本呼吸器学会認定呼吸器専門医、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医、日本喘息学会認定喘息専門医、日本内科学会認定内科医、日本喘息学会認定吸入療法エキスパート
<予防医学・代替医療・環境>
機能的骨盤底筋エクササイズpfilAtes™認定 インストラクター国際資格← NEW✨
カラダ取説®マスター・ジェネラル
環境省 環境人材認定事業 日本環境管理協会認定環境管理士、漢方コーディネーター、内面美容医学財団公認ファスティングカウンセラー、日本セルフメンテナンス協会認定腸内環境管理士、腸内環境解析士、日本温活協会認定温活士、薬膳調整師、管理健康栄養インストラクター、食育健康アドバイザー、日本フェムテックマイスター協会公認フェムテックマイスター®上級、公認妊活マイスター®Basic、日本スキンケア協会認定スキンケアアドバイザー、メンタル士心理カウンセラー、アーユルヴェーダアドバイザー、快眠セラピスト、安眠インストラクター
<文化・生活>
日本園芸協会認定ローズ・コンシェルジュ、ローズソムリエ®(バラ資格)
<受賞歴>
第74回日本アレルギー学会学術大会「働き方改革推進奨励賞」受賞
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