クリニックだより

高齢化社会と共に考える—「老害」という言葉をどう受け止めるか

高齢化社会と共に考える—「老害」という言葉をどう受け止めるか

こんにちは、やまぐち呼吸器内科・皮膚科クリニックの山口裕礼です。

最近、よく耳にする言葉の一つに「老害」という言葉があります。

この言葉は、年齢を重ねた人々に対して否定的なニュアンスで使われることが多く、社会的に議論を呼ぶこともあります。

しかし、私たちがこの言葉を使うとき、少し立ち止まって考えなければならないことがあります。

それは、高齢化社会の進展と、認知能力の低下が影響する可能性があるという点です。

高齢化社会の現実とその影響

日本は急速に高齢化が進んでいる国の一つであり、今後ますます高齢者の数が増えていくことが予想されます。

2025年には、全人口の約30%が65歳以上となり、その数は増加を続ける見込みです。

このような状況では、高齢者が日常生活において直面する問題も増えていきます。

年齢を重ねると、誰しも身体的な機能や認知能力が少なからず低下することがあります。

これは自然な現象であり、年齢とともに避けられないものです。

しかし、こうした変化が社会生活にどのように影響を及ぼすのかを、私たちは理解し、配慮する必要があります。

認知能力の低下とその影響

加齢に伴う認知能力の低下は、多くの高齢者にとって避けがたい現実です。

物忘れや判断力の低下、時には周囲の状況に対する理解力が鈍ることもあります。

これにより、意図せずに他人に迷惑をかけたり、社会的なルールに従いきれなかったりすることがあります。

例えば、交通のルールを守れなかったり、公共の場で他人に対して不適切な発言をしてしまうことがあるかもしれません。

こうした行動が「老害」と呼ばれることが多いですが、これらは必ずしもその人の性格や意図によるものではなく、認知機能の低下が背景にあることがあるということを理解することが大切です。

「老害」とはどう向き合うべきか

「老害」という言葉が広まる中で、私たちはその意味を再考する必要があります。

この言葉が持つ否定的なイメージや偏見をそのまま受け入れることなく、高齢者が抱える困難に対して共感し、理解を深めることが重要です。

もちろん、誰もが年齢に関係なく社会の中で自分の役割を果たすことは求められます。

しかし、加齢による認知機能の低下や体力の衰えが原因で、思わぬ問題を引き起こしてしまう場合もあることを私たちは認識しなければなりません。

このような状況に対して、「老害」というラベルを貼るのではなく、どうしたらその人が社会でより安心して過ごせるのかを考えることが大切です。

高齢者支援と社会全体の理解

高齢者が社会に貢献し、役割を持ち続けるためには、社会全体での支援が必要です。

認知症や認知能力の低下を予防するための施策や、周囲の理解を深めるための取り組みが重要です。

また、地域社会においては、高齢者同士の支え合いやコミュニケーションを促進するような場作りが求められます。

例えば、地域のサロンや社会参加の機会を提供することで、孤立を防ぎ、認知機能を活性化させることができるかもしれません。

高齢者が自分のペースで参加できる活動を通じて、社会とのつながりを感じることができる環境が整えば、誰もが活力を持ち続けることができます。

未来の高齢化社会に向けて

高齢化社会が進む中で、私たちはお互いに思いやりを持って生活していく必要があります。

今後、私たち自身が高齢者となったとき、周囲のサポートが必要になる場面も出てくるかもしれません。

そのためにも、今から高齢者の立場や視点を理解し、共に支え合う社会を作るためにできることを考えていきましょう。

「老害」という言葉をただ否定的に捉えるのではなく、どうすれば高齢者がより良い環境で暮らせるか、また高齢者の方々が自分のペースで社会に参加し続けられるような仕組みを考えることが重要です。

年齢を重ねることは誰にでも訪れることであり、共に生きる社会の一員としての理解と配慮が、私たちの未来をより豊かなものにしてくれるでしょう。

やまぐち呼吸器内科・皮膚科クリニック 山口裕礼

投稿者プロフィール

院長:山口裕礼(やまぐちひろみち)
院長:山口裕礼(やまぐちひろみち)
2017年1月、希望が丘(神奈川県横浜市)にて、やまぐち呼吸器内科・皮膚科クリニックを開院しました。