クリニックだより 内科

広島にて:現代の三本の矢―アテキュラ、エナジア、ゾレアの結束

内科

Asthma National Symposium~喘息治療の潮流と未来~

現地参加350名 
Web登録1万5千人

全国喘息講演会参加の感想と今後の方針

私は、多くの喘息患者を診ています。

その中には、既存のガイドラインや治療法を用いても改善が見られず、発作を繰り返す患者も少なくありません。

彼女、彼らを診療しながら、どうにかして症状を改善し、苦しみを少しでも軽減できないかと日々模索しています。

この度、広島県で開催された全国喘息講演会に参加することを決めたのは、まさにそんな背景からでした。

喘息治療の最前線に触れ、新たな治療法やアプローチを学ぶことが、私の診療に新たな視点をもたらすと信じています。

個別治療の重要性を改めて認識し、一人ひとりの患者さんにとって最適な治療法を提案できるようになることが、私の目標です。

講演会では、喘息の最新治療に関する多くの知見が共有され、新しい薬剤や治療法に関する情報を得ることができました。

特に、コントロールが困難な喘息患者に対する新しいアプローチや、生物学的製剤の使用に関する最新の研究成果は、私の診療に大きな影響を与えると確信しています。

次に患者さんを診察する際、私はこれらの新しい知識を活用し、患者さんの症状改善に向けた新たな提案をしたいと考えています。

既存の治療法に加えて、個別化された治療計画の重要性を認識し、一人ひとりの患者さんにとって最適な治療を提供できるよう努めていきます。

広島での学びは、私の診療における新たな一歩となり、患者さんへのより良い治療につながると信じています。

この講演会は、喘息治療の新たな地平を開く貴重な機会となりました。

講演の総括

当院が昨年のアレルギー学会にて発表した下記2点がいよいよ全国講演にても再度強調されていた。

・喘息のコントロールが不十分な場合、特にICS/LABA(吸入ステロイドと長時間作用型ベータ2刺激薬の組み合わせ治療)の中用量使用時には、LABAの変更(アテキュラへの変更)を検討する事。

・ブリーズヘラー製剤は問診で吸入手技の妥当性を確認できる事

この講演会は、喘息治療の現代的な課題と解決策に焦点を当てたものでした。

特に、喘息のコントロール不良という世界的な問題に対する多角的なアプローチが強調されました。

治療の個別化(Treatable traits)の概念や、非専門医でも容易に理解できる新しいガイドラインの提供は、今後の臨床現場に大きな影響を与えることでしょう。

また、吸入薬の正しい使用方法や、新たな薬剤の有効性に関する深い洞察は、日々の治療選択において非常に参考になるものでした。

吸入指導の重要性や、デバイスの選択についての具体的な情報は、患者のQOL(生活の質)向上に直接貢献することでしょう。

費用対効果を考慮した治療法の選択というテーマも、医療経済学の観点から重要でした。

特に、オマリズマブ(ゾレア)のような生物学的製剤の適切な使用は、経済的にも治療成果の面でも大きな意義があります。

オープニングリマークス

この講演会のオープニングリマークスでは、喘息の現状とその治療における重要な課題について触れられました。

・日本国内には約1000万人の喘息患者がおり、これは人口の約8%に相当します。特に、5-10%は重症喘息とされています。

・コントロール不良の喘息は、世界的な健康問題であり、治療の改善が求められています。

・個々の患者に適した治療法を選択する「Treatable traits」のアプローチが、治療の重要な側面として強調されました。

・日本喘息学会の設立経緯や、2023年版の喘息専門ガイドラインについて説明があり、特に非専門医向けの内容が強調されました。

・また、喘息の診断における問診の重要性や、コントロール不良の成人喘息における生物学的製剤の使用、コストの問題点、2022年の喘息死亡率についても言及されました。

特別講演1、喘息吸入薬再考―患者に寄り添う吸入治療薬の選択―

この講演では、喘息治療における吸入薬の重要性が強調されました。

特に、重症喘息患者における吸入抗コリン薬の使用率が低いことが指摘され、これを改善するための方法が提案されました。

講演者は、呼吸機能の正常化を目指す治療の重要性や、吸入抗コリン薬の臨床的な効果について詳細に説明しました。

また、吸入薬の選択における様々な要因、特に患者の吸入手技の適正化と、使用するデバイスに関する重要な情報も共有されました。

講演の流れ
・吸入抗コリン薬についての話
・重症喘息においても吸入抗コリン薬の使用率は13%と低い
・呼吸機能の正常化を目指すこと
・軽症中等症では臨床的寛解は達成できるかについて自験例の提示
・臨床的寛解を達成していない症例は吸入抗コリン薬が十分に使用できておらず、使用する余地があり
・アセチルコリン放出のメカニズムや喘息気道での神経周囲の好酸球浸潤について基礎的な話
・トリプル製剤の位置づけについて
・LAMAのメタ解析においてグリコピロリウムは優れていること
・トリプル製剤は呼吸機能を改善し増悪を抑制する事
・吸入抗コリン薬を追加を検討する患者像としてSABAの使用、咳嗽と喀痰のコントロール不良、夜間症状あり、アドヒアランス不良症例
・デバイスについての説明。ブリーズヘラー製剤の機器抵抗は低く吸入流速が高まりやすい
・ブリーズヘラー製剤は問診で吸入手技の妥当性を確認できる事
・アテキュラについて
・吸入β2刺激薬であるインデカテロール酢酸塩は吸入時の咳嗽が少ない
・インデカテロールは持続時間が長い、効果の強さがよい、動悸が少ない、筋攣縮が少ない、嗄声も少ない特徴がある
・他剤と比べても呼吸機能がよく、増悪も従来のものと比較しても良い結果
・安全性も心配ない

特別講演2 PGAMから紐解く 吸入指導のNew Standard

第二の講演では、喘息治療における吸入指導の新しいスタンダードに焦点が当てられました。

ここでは、治療ゴールの設定の必要性や、患者と医療提供者間の信頼関係の構築が重要とされました。

講演者は、吸入薬の臨床効果に影響を与える患者の吸入力や吸入手技について詳細に説明し、吸入手技不良の患者が依然として多いという問題を指摘しました。

具体的な指導方法や、吸入薬を肺内に効率よく送達するための条件についても触れられました。

講演の流れ
・ガイドラインの説明
・喘息の治療における吸入療法が大事であり吸入指導が必須であること
・治療ゴールの設定が必要な事
・患者と医師、薬剤師の信頼関係が重要
・吸入薬の臨床効果について 吸入力、吸入手技など患者要因について
・吸入薬を肺内に効率よく送達する条件について
・吸入手技不良の患者が40%近くおり、この40年間変わらない
・熱心に吸入指導を行っている施設もあるが現実は変わっていない
・ブリーズヘラーは特筆すべきデバイスであること
・ゆっくり大きく吸入する
・症例提示あり
・吸入療法エキスパートのためのガイドブック2023の紹介

特別講演3 費用対効果を意識した抗体製剤の選択

最後の講演では、喘息治療における抗体製剤の選択における費用対効果の考慮に焦点を当てました。

ここでは、特にオマリズマブの使用例が提示され、その臨床的な効果や寛解の達成について詳しく議論されました。

講演者は、生物学的製剤の選択にあたり、吸入手技の正確さを確認する重要性や、次世代の治療アプローチについても触れました。

また、行動経済学や心理学の観点から、生物学的製剤の使用に関する意思決定プロセスについても語られました。

講演の流れ
・オマリズマブで著効した症例提示あり
・臨床的寛解について定義の紹介
・重症喘息の寛解についての私見
 スイスチーズモデルの紹介あり、生物学的製剤を使用する以前に吸入手技は正しいのか確認の重要性
・次世代の介入
・青年期の低肺機能(遺伝要素、小児喘息、感染症、副流煙)
・気道過敏性の正常化についての私見
・次世代のための超スイスチーズモデル
・生物学的製剤のフローチャート
・KOFUstudyの紹介
・行動経済学について
 リスクの回避性、時間割引/現在バイアス(先延ばし傾向)で説明可能
・心理学におけるウィンザー効果、社会的事実で説明可能

・ICERの考え方の紹介
 オマリズマブは効果の割に安く、費用対効果が良い薬剤である
・オマリズマブは呼気一酸化窒素や好酸球に依らない
・アトピー性喘息がオマリズマブの良い適応

クロージングリマークス

講演会の締めくくりとして、クロージングリマークスでは、喘息治療における重要なポイントが再度強調されました。

・喘息のコントロールが不十分な場合、特にICS/LABA(吸入ステロイドと長時間作用型ベータ2刺激薬の組み合わせ治療)の中用量使用時には、LABAの変更を検討することが提案されました。

・生物学的製剤の適切な使用とその間の使い分けについてのアドバイスがありました。特に、オマリズマブのメリットに関する詳細な情報が提供されました。

 

投稿者プロフィール

院長:山口裕礼(やまぐちひろみち)
院長:山口裕礼(やまぐちひろみち)
2017年1月、希望が丘(神奈川県横浜市)にて、やまぐち呼吸器内科・皮膚科クリニックを開院しました。