「死に無関心な人々が、突然“死”に直面するとき」🕊️

本の中でベテラン医師が、若い医師にこんな趣旨のことを語ります。
ふだん人の死にほとんど触れずに生きてきた人たちが、
いきなり身近な人の死と向き合うと、
混乱し、驚き、動揺し、ときには理不尽な怒りを医療者にぶつけてくる。
それは頭が悪いからでも、性格が悪いからでもなく、
ただ「死」について知らなかっただけなのだ。
現代は、多くの方が「本物の死」に触れないまま大人になります。
- おじいちゃん・おばあちゃんは病院で亡くなる
- ご遺体と対面するのは、すべてが整えられた葬儀場
- 苦しむ姿、最期の呼吸、家族が揺れる時間……は病院の中に隠れてしまう
だからこそ、
突然、大切な人の「死」に出会ったとき、心が受け止めきれない。
その戸惑いの矛先が、医師や看護師に向いてしまうことがあります。
怒りや混乱は「悪いこと」ではなく、自然な反応です😢
医療現場では、
- 「どうして助けてくれなかったんですか」
- 「もっと早く教えてくれていれば」
- 「別の治療があったんじゃないですか」
そんな言葉を、涙と怒りの中でぶつけられることがあります。
医師側から見ると、医学的にはできることをやりきったケースでも、
ご家族にとっては「突然の別れ」にしか見えません。
このギャップが、
“感情の爆発” となって現れます。
本のなかの医師は、それをこう受け止めます。
無知ゆえの混乱であり、責めるべき“悪意”ではない。
だからこそ、医療者の側が「どうかこの人の怒りを受け止められますように」と悩み続けなければならない。
この視点は、医師である私にも深く刺さりました。
医師は「死を見慣れてしまった人」になってはいけない⚖️
呼吸器内科や緩和ケアの現場では、
どうしても「死」と隣り合わせの日々になります。
- 何度も看取りを経験する
- モニターの数字や検査値を見れば、だいたいの予測がつく
- ガイドラインやエビデンスに沿って治療方針を決めていく
この繰り返しのなかで、
“死に対して鈍感になる” 危険性があります。
本の医師は、そこで立ち止まります。
だからといって、医療者が怠惰になってはいけない。
日常的に「死」と向き合っている私たちこそ、
混乱し怒るご家族を前に、どう寄り添うか悩み続ける義務がある。
「慣れ」ではなく、「問い続けること」。
医学的な手順だけでなく、
残された方の心の揺れにも責任を持つこと。
それが“いい医師”への条件なのだと、この場面は語りかけてきます。
死をタブーにしない社会へ──患者さんと一緒に考えたいこと🌸
では、患者さんやご家族の側にできることはあるでしょうか。
私は、次の三つがとても大切だと感じています。
① 「死」を日常の言葉で話してみる
- 「もしものとき、どこで過ごしたい?」
- 「延命治療について、どんなイメージを持っている?」
- 「苦しくない最期って、どんな状態だろう?」
こんな会話を、元気なうちから少しずつ。
最初はぎこちなくても、“死”が特別すぎるものではなくなるだけで、
いざというときの混乱は、かなり減らせます。
② わからないことは、医師や看護師にそのまま聞いてみる
「こんなこと聞いたら失礼かな…」と遠慮される方も多いのですが、
実は医療者は、聞いてもらえたほうが嬉しいです😊
- 「実際どのくらいの可能性がありますか?」
- 「この治療を続けると、どんな最期になりそうですか?」
- 「家で看取りたい場合、どこまでできますか?」
“わからないまま受け入れる”ほうが、
あとから悔しさや怒りが大きくなりがちです。
③ 感情があふれた自分を責めない
大切な人を失いそうなとき、あるいは失った直後に、
- 医師にきつい言葉を言ってしまった
- もっとできたのでは…と自分を責めてしまう
そんな方もいらっしゃいます。
でも、それは
「死を知らなかった」世界から、突然押し出された人間として、極めて自然な反応です。
もし、そんな自分を責めている方がいたら、
「それだけ、その人を大切に思っていた証拠なんだ」と、そっとお伝えしたいです。
やまぐち呼吸器内科・皮膚科クリニックでお手伝いできること🏥
当院は、呼吸器の慢性疾患や高齢の患者さんが多く通うクリニックです。
- 病気をよくすること
- 症状を軽くすること
はもちろん大切ですが、
- 「この病気と、これからどう付き合うか」
- 「どんな最期を迎えたいか」
- 「家族とどう話したらいいか」
といった、死生観の相談も、医療の一部だと考えています。
診察のなかで、ふとそんな話題になったときは、
どうぞ遠慮なく、今思っていることをそのまま話してみてくださいね。
おわりに──「死を知ること」は、「今を大切に生きること」✨
『勿忘草の咲く町で』の一節は、
「死を知らないこと」そのものを責めるのではなく、
だからこそ、死に日々触れている医療者も、
ふだん死から目をそらしている私たちも、
一緒に悩み続けよう
と、優しく背中を押してくれているように感じました。
死を考えることは、
暗くなることでも、諦めることでもありません。
- 「誰と一緒にいたいか」
- 「どんな時間を増やしたいか」
- 「今、何を大事にしたいか」
を、もう一度見つめ直すきっかけになります🌈
このブログが、
あなたやご家族が「死」と少しだけ仲良くなり、
“いま”を大切に生きるヒントになればうれしく思います。
投稿者プロフィール

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からだ整えラボ
① 医学=呼吸器・アレルギー
② 生活=腸・温活・食・睡眠・肌
③ 幸福=働き方・環境・園芸
“病気を診るだけでなく、人をまるごと診たい”
——その思いを胸に、学びを続けています。
医学的根拠 × 生活習慣 × 心の豊かさ
三位一体の医療をめざしています。
資格:
<医学・医療>医学博士、日本呼吸器学会認定呼吸器専門医、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医、日本喘息学会認定喘息専門医、日本内科学会認定内科医、日本喘息学会認定吸入療法エキスパート
<予防医学・代替医療・環境>
カラダ取説®マスター・ジェネラル ← NEW✨
環境省 環境人材認定事業 日本環境管理協会認定環境管理士、漢方コーディネーター、内面美容医学財団公認ファスティングカウンセラー、日本セルフメンテナンス協会認定腸内環境管理士、腸内環境解析士、日本温活協会認定温活士、薬膳調整師、管理健康栄養インストラクター、食育健康アドバイザー、日本フェムテックマイスター協会公認フェムテックマイスター®上級、公認妊活マイスター®Basic、日本スキンケア協会認定スキンケアアドバイザー、メンタル士心理カウンセラー、アーユルヴェーダアドバイザー、快眠セラピスト、安眠インストラクター
<文化・生活>
日本園芸協会認定ローズ・コンシェルジュ、ローズソムリエ®(バラ資格)
<受賞歴>
第74回日本アレルギー学会学術大会「働き方改革推進奨励賞」受賞
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