【医療×文化人類学】私は診察室で “フィールドワーク” をしている。

あたりまえを壊して、患者さんの世界を理解する医療へ 🌏✨
こんにちは。
やまぐち呼吸器内科・皮膚科クリニック
院長の 山口裕礼 です。
最近、文化人類学の本を読みながら、
ふと胸が熱くなる瞬間がありました。
「自分の“あたりまえ”をいったん壊し、
目の前の人びとの世界の見方を学び直す」
これ──
まさに私が毎日、診察室でやろうとしていることそのものだと
ハッとしたのです。
◆ 文化人類学と医療は“そっくり”だった
添付していただいたページには
こんな図が描かれていました。
🔹 私たちの文化
🔹 彼ら(研究対象の人びと)の文化
🔹 その間にある フィールドワーク
🔹 互いの理解がゆっくり広がっていくプロセス
これを見た瞬間、
私は思いました。
「これは診察室そのものではないか」
患者さんは一人ひとり、
世界の見え方が違います。
・仕事の不安
・家族の事情
・薬への考え方
・病気への恐怖
・過去の医療体験
・“病気の意味”の捉え方
それらすべては、
文化人類学でいう「文化」そのもの。
医師はそれを理解しない限り、
本当の治療にたどりつけません。
◆ 私の診療は “患者さんの文化に入り込む作業”
文化人類学者は、
相手の社会に入り、
その価値観を理解しようとします。
医師もまったく同じです。
診察室で私は、
患者さんの言葉だけでなく
沈黙・表情・話の順番・仕草・迷い
そうした“文脈すべて”を読み取ろうとしています。
それは一種の
フィールドワーク(現地調査) です。
◆ “患者さんが大切にしていること” を知るまで治療は始まらない
添付された本には、
文化人類学の核心としてこう書かれていました。
「相手の前提に気づき、自分の前提を一度崩すこと」
医療も実は同じです。
私たち医師には、
“医療の前提” があり、
“正しい治療の形” が頭の中に存在します。
でもその前提は、
患者さんの人生の前提とは必ずしも一致しません。
だから私はいつも
👂「どう感じていますか?」
🧩「どこが一番つらいですか?」
💬「何が不安ですか?」
と、その人の“世界観”に近づこうとします。
◆ しかし——これは「誰にでもすぐできる医療」ではない
ここで、非常に大切な現実をお伝えします。
これまで書いたことは、
理想形であり、レベルの高い医療です。
そしてこれは
患者さん全員に、いきなりできるわけではありません。
文化人類学にも
「長期的なフィールドワーク」が必要なように、
医療でも
🌱 時間
🌱 診察を重ねること
🌱 信頼関係
🌱 安心して話せる雰囲気
これらが揃って初めて、
深い理解にたどりつけます。
だから私は、
患者さんと時間をかけ、
関係を築きながら少しずつ深く入っていきます。
焦ってしまえば、
本当の思いは出てきません。
医療は「一瞬」で行うものではなく
「関係」で成立するからです。
◆ 信頼が育つと、診療は一気に深くなる
何度か診ていく中で、患者さんがポツリと言います。
「先生、この話は初めてしますが…」
「家族に言えない悩みがあって…」
「薬の本音を言っていいですか…」
こういう瞬間は、
文化人類学でいう
✨ フィールドが開いた瞬間
✨ 異文化に入る扉が開いた瞬間
なのです。
そこから治療は
飛躍的に前に進み始めます。
◆ 医療は、患者さんと私がつくる“ふたつの文化の対話”
文化人類学は
文化の対立 ではなく
文化の対話 を重視します。
医療も全く同じです。
医師が押し付けるのではなく、
患者さんが迎合するのでもない。
両者の文化が交差し、
その接点で治療が生まれます。
その接点をつくるのが、
私の仕事です。
◆ 結論
文化人類学は、
私の医療を言語化してくれた。
今回読んだ本は、
私がずっと感覚的にやってきたことを
“学問として明確に言語化” してくれました。
「私は診察室でフィールドワークをしていたんだ」
と深く納得しました。
そして、
その医療は決して間違っていなかったと
強く再確認しました。
これからも私は、
患者さん一人ひとりの文化を理解し、
私の文化も相対化し、
二つの文化の交差点で最善の治療を探します。
医療は“技術”ではなく、
人と人がつくる“文化”である。
その信念を胸に、診療を続けていきます。
投稿者プロフィール

-
からだ整えラボ
① 医学=呼吸器・アレルギー
② 生活=腸・温活・食・睡眠・肌
③ 幸福=働き方・環境・園芸
“病気を診るだけでなく、人をまるごと診たい”
——その思いを胸に、学びを続けています。
医学的根拠 × 生活習慣 × 心の豊かさ
三位一体の医療をめざしています。
資格:
<医学・医療>医学博士、日本呼吸器学会認定呼吸器専門医、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医、日本喘息学会認定喘息専門医、日本内科学会認定内科医、日本喘息学会認定吸入療法エキスパート
<予防医学・代替医療・環境>
カラダ取説®マスター・ジェネラル ← NEW✨
環境省 環境人材認定事業 日本環境管理協会認定環境管理士、漢方コーディネーター、内面美容医学財団公認ファスティングカウンセラー、日本セルフメンテナンス協会認定腸内環境管理士、腸内環境解析士、日本温活協会認定温活士、薬膳調整師、管理健康栄養インストラクター、食育健康アドバイザー、日本フェムテックマイスター協会公認フェムテックマイスター®上級、公認妊活マイスター®Basic、日本スキンケア協会認定スキンケアアドバイザー、メンタル士心理カウンセラー、アーユルヴェーダアドバイザー、快眠セラピスト、安眠インストラクター
<文化・生活>
日本園芸協会認定ローズ・コンシェルジュ、ローズソムリエ®(バラ資格)
<受賞歴>
第74回日本アレルギー学会学術大会「働き方改革推進奨励賞」受賞
最新の投稿
クリニックだより2025年11月23日【医療×文化人類学】私は診察室で “フィールドワーク” をしている。
からだ整えラボ2025年11月23日🍊【スーパーで巨大な“渋柿”に遭遇!】さて、どうしようかナ?🤔💭
クリニックだより2025年11月22日🌸【大切なお知らせ】重症花粉症のゾレア治療について:新規患者さまの受付を停止します
クリニックだより2025年11月22日🚨【速報】12月は「初日からピーク突入」!😷

