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子供の咳が長引く場合の喘息と診断的治療について

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子供の咳が長引く場合の喘息と診断的治療について

皆さん、こんにちは。お子さんの咳がなかなか治らず心配されている方も多いのではないでしょうか。

皆さん、こんにちは。当院では成人の喘息を専門に診ていますが、親御さんが喘息を患っている場合、そのお子さんも喘息を持っていることが多いです。

さらに、親の喘息の調子が悪くなると、子供の喘息も同様に悪化することがよく見られます。

そのため、親御さんが喘息の症状で困ったときに、お子さんのケアについてお話しする機会が増えています。

当院は成人専門の呼吸器クリニックです。

そのため当院に受診できないお子さんたちのために、親御さんが知っておくべき内容をまとめました。

子供の咳が長引く場合、その原因として様々な要因が考えられますが、中でも「喘息」は一つの重要な鑑別診断です。

今日は、長引く咳の中で喘息の可能性を考える際のポイントと、診断的治療についてお話しします。

1. 長引く咳と喘息の関係

子供の咳が2週間以上続く場合、通常の風邪や気管支炎とは異なる原因を考える必要があります。

その中でも、喘息が疑われる場合は特に注意が必要です。

喘息は、気道が炎症を起こしやすく、狭くなることで息苦しさや咳を引き起こします。

以下のような症状が見られる場合は、喘息の可能性が高いと考えられます。

  • 夜間や早朝の咳: 特に寝ている時や起床直後に咳がひどくなる。
  • 運動後の咳や息切れ: 運動後に咳が出る、または息切れが生じる。
  • ゼーゼー音(喘鳴): 息を吐くときにゼーゼー、ヒューヒューといった音がする。
  • 繰り返す呼吸困難: 突然の呼吸困難が何度も起こる。

2. 診断的治療のアプローチ

子供に喘息の可能性がある場合、まず診断を確定するための検査を行いますが、時には検査結果がはっきりしない場合もあります。

そのような場合、「診断的治療」というアプローチを用いることがあります。

診断的治療とは、特定の治療法を試みることで症状が改善するかどうかを確認し、その結果から病気の診断に役立てる方法です。

たとえば、喘息が疑われる場合、吸入ステロイドや気管支拡張薬を一定期間使用し、症状が改善するかを見ます。

これにより、喘息である可能性が高まれば、引き続き適切な治療を継続することができます。

3. 年齢別の治療方法

子供の喘息治療は、年齢に応じて適切な方法を選択することが重要です。

以下に年齢別の治療方法を詳しく説明します。

0〜5歳

この年齢層では、喘息の診断が難しい場合もありますが、症状が軽度である場合には吸入ステロイドを使用することが一般的です。

吸入ステロイドは、気道の炎症を抑える効果があり、症状の安定化に寄与します。

また、喘息の症状を引き起こす要因(アレルゲンやウイルス感染など)を避けるための生活指導も重要です。

重症の場合は、経口ステロイドや短期間の吸入ステロイドの使用が検討されます。

6〜11歳

この年齢になると、吸入ステロイドの使用が基本となり、長期的な管理が必要です。

吸入ステロイドは、気道の炎症を継続的に抑えることで、症状の予防に効果的です。

また、必要に応じて気管支拡張薬(β2刺激薬)を併用することがあります。

運動誘発性喘息が疑われる場合には、運動前に予防的に吸入薬を使用することも推奨されます。

12歳以上

思春期以降では、大人と同様の治療が行われることが多いです。

吸入ステロイドや長時間作用型β2刺激薬、必要に応じてモンテルカストなどのロイコトリエン受容体拮抗薬が使用されます。

これらの薬剤は、気道の炎症を抑えつつ、気管支を拡張する効果があります。

また、アレルゲン回避や生活習慣の改善も継続して重要です。

4. 吸入ステロイドの使用意義

吸入ステロイドは、喘息治療において非常に重要な役割を果たします。

その主な効果と意義は以下の通りです。

  • 気道の炎症抑制: 吸入ステロイドは、気道の慢性的な炎症を抑えることで、喘息症状の発生を防ぎます。
  • 症状の予防: 継続的な使用により、夜間や早朝の咳、運動後の息切れなどの症状を予防します。
  • 発作の頻度減少: 吸入ステロイドの使用により、喘息発作の頻度や重症度を減少させることができます。
  • 肺機能の維持: 長期的な使用で肺機能の低下を防ぎ、成長期の子供の健全な肺の発達をサポートします。

吸入ステロイドは、局所的に気道に作用するため、全身への副作用が比較的少なく、安全性が高いとされています。

ただし、正しい使用方法を守ることが重要です。

医師の指導のもと、適切な量と頻度で使用することが推奨されます。

5. 喘息管理のポイント

喘息を効果的に管理するためには、医師の指導のもとで治療計画をしっかりと守ることが大切です。

吸入薬の正しい使い方を身につけ、定期的に症状の変化をチェックし、必要に応じて治療を調整していくことが求められます。

また、喘息を悪化させる可能性のあるアレルゲン(ダニ、ペット、花粉など)をできるだけ避けることや、風邪を引かないようにすることも重要です。

6. まとめ

お子さんの咳が長引いている場合、喘息の可能性を考え、適切な診断や診断的治療を行うことが重要です。

早期に治療を開始することで、症状の改善が期待でき、日常生活への影響を最小限に抑えることができます。

年齢に応じた治療方法の選択や吸入ステロイドの適切な使用により、お子さんの喘息管理を効果的に行いましょう。



子供の喘息ハンドブック

投稿者プロフィール

院長:山口裕礼(やまぐちひろみち)
院長:山口裕礼(やまぐちひろみち)
2017年1月、希望が丘(神奈川県横浜市)にて、やまぐち呼吸器内科・皮膚科クリニックを開院しました。