喘息は走ったから起きるのではない——不安と絶望が呼吸を奪うとき

〜『君を守ろうとする猫の話』が教えてくれた喘息の本質〜

🐈‍⬛ 主人公は「喘息をもつ女性」

この物語の主人公・ナナミは、喘息をもつ女性として描かれています。
作中には、息が苦しくなる場面、胸が締めつけられる感覚、
そして「不安」や「恐怖」と結びついた喘息発作の描写が、何度も登場します。

特に印象的なのが、物語の佳境で語られるこの一節です。

「ここでは心の力がもっとも強い。
喘息を引き起こすのは全力疾走ではない。
不安と絶望だ」
—— 夏川草介『君を守ろうとする猫の話』

この言葉を読んだとき、
「これは比喩ではなく、かなり医学的に本質を突いている」
と、呼吸器内科医として強く感じました。

🫁 喘息は「走ったから」起きるのではない

多くの方が、こう思っています。

🏃‍♂️「走ったから喘息が出た」
😤「無理をしたから苦しくなった」

もちろん、運動誘発喘息は存在します。
しかし実臨床では、それ以上に多いのが——

👉 不安・緊張・恐怖・絶望感が引き金になる喘息

です。

😰 不安が呼吸を乱すメカニズム(医学的に)

不安や恐怖を感じると、体では次のことが起こります。

🔹 自律神経が乱れる
🔹 交感神経と副交感神経のバランスが崩れる
🔹 気道の過敏性が一気に高まる
🔹 気管支がキュッと収縮する
🔹 「息が吸えない」という感覚が強調される

つまり——
💡 喘息は「心」と「気道」が直結している病気なのです。

夏川草介さんは、それを
「不安と絶望」という言葉で、極めて美しく、正確に描写しています。

📚 文学が教えてくれる、喘息のもう一つの顔

医学書には、

📄 気道炎症
📄 好酸球
📄 吸入ステロイド
📄 気管支拡張薬

といった言葉が並びます。

もちろん、これらは治療の核です💊
しかし、文学はこう問いかけます。

🕊️「その人は、どんな不安を抱えて息をしているのか」
🕊️「何に追われ、何を守ろうとしているのか」

ナナミが喘息を起こす場面は、
単なる発作描写ではありません。

それは——
🔥 追い詰められた心が、身体に現れた瞬間
なのです。

🏥 当院に喘息患者さんが多い理由

やまぐち呼吸器内科・皮膚科クリニックには、
多くの喘息患者さんが通院されています。

その中で、私はいつもこう感じます。

💬「薬だけでは足りないことがある」
💬「数値では測れない苦しさがある」

だからこそ当院では、

🌱 薬物治療をきちんと行う
🌱 発作の背景にある不安にも耳を傾ける
🌱 「なぜこのタイミングで悪化したのか」を一緒に考える

この姿勢を大切にしています。

🌿 「頑張らなくてもいい」の落とし穴

ここで一つ、あえて触れておきたいことがあります。

最近よく聞く
「頑張らなくてもいいよ」という言葉。

これは、人を救う言葉でもありますが、
同時に⚠️ 危うさも含んでいます。

喘息の方が、

😔「不安だけど、向き合わなくていい」
😔「苦しいけど、放っておけばいい」

となってしまうと、
気道の炎症は静かに、確実に進行します。

👉 頑張らなくていい ≠ 何もしなくていい

なのです。

🐱 君を守ろうとする存在

この物語のタイトル
『君を守ろうとする猫の話』

私はこれを、こう読みました。

🐾 医師も
🐾 本も
🐾 言葉も

—— 「君を守ろうとする存在」なのだと。

喘息は、
走ったから起きる病気ではありません。
喘息は、ときに不安や絶望が重なったとき、呼吸というかたちで表に現れることがあります。

だからこそ、
医学と文学の両方が必要なのだと思います📖🫁✨

🏷️まとめ

  • 喘息は「心」と深く結びついた病気
  • 不安・恐怖・絶望が発作の引き金になる
  • 夏川草介さんの描写は、医学的にも本質的
  • 薬と同時に「背景」を診ることが大切

呼吸が苦しいとき、
それは身体だけでなく、
心からのサインかもしれません。

いつでもご相談ください😊
あなたの呼吸を、
一緒に守っていきましょう🌿

投稿者プロフィール

院長:山口裕礼(やまぐちひろみち)
院長:山口裕礼(やまぐちひろみち)
からだ整えラボ
① 医学=呼吸器・アレルギー
② 生活=腸・温活・食・睡眠・肌
③ 幸福=働き方・環境・園芸
“病気を診るだけでなく、人をまるごと診たい”
——その思いを胸に、学びを続けています。
医学的根拠 × 生活習慣 × 心の豊かさ
三位一体の医療をめざしています。
資格:
<医学・医療>医学博士、日本呼吸器学会認定呼吸器専門医、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医、日本喘息学会認定喘息専門医、日本内科学会認定内科医、日本喘息学会認定吸入療法エキスパート
<予防医学・代替医療・環境>
機能的骨盤底筋エクササイズpfilAtes™認定 インストラクター国際資格← NEW✨
カラダ取説®マスター・ジェネラル
環境省 環境人材認定事業 日本環境管理協会認定環境管理士、漢方コーディネーター、内面美容医学財団公認ファスティングカウンセラー、日本セルフメンテナンス協会認定腸内環境管理士、腸内環境解析士、日本温活協会認定温活士、薬膳調整師、管理健康栄養インストラクター、食育健康アドバイザー、日本フェムテックマイスター協会公認フェムテックマイスター®上級、公認妊活マイスター®Basic、日本スキンケア協会認定スキンケアアドバイザー、メンタル士心理カウンセラー、アーユルヴェーダアドバイザー、快眠セラピスト、安眠インストラクター
<文化・生活>
日本園芸協会認定ローズ・コンシェルジュ、ローズソムリエ®(バラ資格)
<受賞歴>
第74回日本アレルギー学会学術大会「働き方改革推進奨励賞」受賞