🩺「顔色を見ずに診る医療」と「名前を忘れても“先生”」

―ある一流知識人のリアルな医療体験記から考える、令和の医療とは―

こんにちは。
やまぐち呼吸器内科・皮膚科クリニック院長の山口裕礼です。

今回は、かつて世界各国で外交の最前線に立ち、日本を代表して超大国○○大使まで務めた方の「医療体験記」をご紹介します。
あえてお名前は出しませんが、非常に高い教養と社会的視座をもつ人物です。

その方の父が病に倒れ、患者として医療の世界に触れたときに綴った文章は、決して特別な話ではありません。
むしろ「今、この国の医療現場で、実際に起きていること」でした。

📉「医師とは自分に向かない仕事」だと思っていた著者

著者は医師という職業を、かつては自分と正反対の存在だと思っていたそうです。
理由は3つ。

  1. 医学部に入るには数学や物理化学が完璧でなければならないと思っていた
  2. 同じ科、同じフロアで何年も同じ仕事を繰り返すのは耐えられない性格だった
  3. 病人と至近距離で日々接するのは心理的に苦手だった

しかし、自身や身内の病を通して、医療と深く関わるようになった著者は、次第にそのイメージが崩れていったといいます。

🛏️ 入院しても、医師は来ない

大きな病院に父が入院した著者。ところが担当医は、ほとんど病室に現れない。
何度お願いしても変わらない。しびれを切らして上層部に相談すると、こう言われたそうです。

「担当医は毎日、コンピューター上できちんとデータをフォローしています」

著者は言い返します。

「でも、顔色を見たり、話しかけたりしてわかることもあるのでは?」

しかし返ってきたのは、

「いやあ、もう時代が違うんですよ」

という冷たい一言。
「顔を見て診る時代」が終わったことを、突きつけられた瞬間でした。

❓「糖尿病になりませんか?」という質問と、その代償

ある日、有名な眼科病院に同行受診した著者は、ステロイドの大量投与を勧められます。
勇気を出して尋ねました。

「先生、それは糖尿病になりませんか?」

その医師は即座に答えます。

「それももちろんあるけど、内科で血糖をコントロールすれば大丈夫です」

表情は淡々としていたそうです。

そして次回の診察時、その医師は小冊子を手渡しながらこう言いました。

「あなたのことを雑誌に書いておいたよ」

読んでみると、そこには

「最近ネットで情報が氾濫しており、生半可な知識で医師に質問する患者が増えていて迷惑だ」

記されていた――
このとき著者は、「対話したつもりだったが、そう受け取られていなかった」ことを知ります。

👨‍👩‍👧‍👦 それでも、医療に支えられているという現実

そんな著者も、高齢となった今では、眼科・耳鼻科・整形外科・呼吸器内科と、複数の診療科に定期通院しています。
さらに2か月ごとの歯科クリーニングも欠かさず、こう語っています。

「これらの医師のおかげで、何とかつながって生きている」

自分だけではありません。
妻も娘夫婦も、日々の不調で病院に駆け込み、

「都市部に住んでいて本当によかった」
と実感しているそうです。

💰 健康保険のありがたさ

著者はまた、海外在住の友人がSNSでつぶやいていたこんな体験を紹介します。

「子どもが頭をぶつけて救急にかかったら、診察だけで5万円。入院すれば1日28万円。特別ケアは71万円。検査費・医師代は別料金」

その金額に驚いた著者は、

「日本の健康保険制度のおかげで、私の命はつながっている。
我が国の平均寿命が長いのはこの制度の成果だと思う」

とまで断言しています。

🏌️‍♂️ 「先生」という言葉が持つ距離感と、違和感

筆者は医師の友人が多く、かつてゴルフを共にした際のことをこう記しています。

「医師たちはゴルフ場でも互いに“先生”と呼び合い、
“センセ、ナイスショット!”“センセ、ドンマイドンマイ!”と声を掛け合っていた。」
そのことに”違和感”を感じた。

別の医師にその感想を伝えると、逆にこう返されたそうです。

「キミたち元外交官も、大使と呼び合ってるじゃないか」

しかし著者は、

「それは名前を思い出せない先輩が多いからで…」

と、どこか皮肉を交えながら返答しています。

🏥 当院が大切にしていること:人を“診る”ということ

この体験記には、医療に対する愛情と期待、そして現実のギャップが淡々と、しかし深く描かれていました。

当院では、こうした現実を踏まえながら、以下のことを大切にしています。

✅ 顔を見て診る

・画面だけでなく、表情・声・体の動きから情報を読み取る診療を実践します。

✅ 対話の医療

・患者さんの疑問に「迷惑だ」と言わず、受け止め、説明する努力を続けます。

✅ 社会的役割としての医療

・健康保険制度の恩恵を無駄にせず、丁寧で過剰にならない医療を心がけます。

🪞 最後に:「これは現実です」

この手記は、特別な人の“エピソード”ではありません。
私たちが日々の診療のなかで、患者さんから聞く声と重なります。

  • 顔を見てほしい
  • 画面ではなく、自分の言葉に耳を傾けてほしい
  • 専門知識を持っているからこそ、謙虚に伝えてほしい

そうした想いを、私たちは真摯に受け止め、
「診察とは、数字を見るだけではなく“人を診る”こと」であると、改めて心に刻んでいます。


📍 やまぐち呼吸器内科・皮膚科クリニック
https://yamaguchi.clinic

あなたの不安や疑問を、黙って受け流さない医療を、これからも。

投稿者プロフィール

院長:山口裕礼(やまぐちひろみち)
院長:山口裕礼(やまぐちひろみち)
からだ整えラボ
資格:
<医学・医療>医学博士、日本呼吸器学会認定呼吸器専門医、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医、日本喘息学会認定喘息専門医、日本内科学会認定内科医、日本喘息学会認定吸入療法エキスパート
<予防医学・代替医療・環境>
環境省 環境人材認定事業 日本環境管理協会認定環境管理士、漢方コーディネーター、内面美容医学財団公認ファスティングカウンセラー、日本セルフメンテナンス協会認定腸内環境管理士、腸内環境解析士、日本温活協会認定温活士、薬膳調整師、管理健康栄養インストラクター、食育健康アドバイザー、日本フェムテックマイスター協会公認フェムテックマイスター®上級、公認妊活マイスター®Basic、日本スキンケア協会認定スキンケアアドバイザー、メンタル士心理カウンセラー、アーユルヴェーダアドバイザー
<文化・生活>
日本園芸協会認定ローズ・コンシェルジュ、ローズソムリエ®(バラ資格)