🎭【ネタバレあり】――『シャイニングな女たち』を観て考えた「働く」ということ

非正規という立場が人を透明にしてしまうとき
やまぐち呼吸器内科・皮膚科クリニック
医師の **山口裕礼(やまぐち ひろみち)**です。
私は医師として日々診療に携わる一方で、
第74回 日本アレルギー学会学術大会(東京国際フォーラム)において
「働き方改革推進奨励賞(2024年度)」を受賞する機会をいただきました。
その立場で、今回の舞台
『シャイニングな女たち』を観たとき、
どうしても見過ごせなかった場面があります。
それが、
主人公が「非正規雇用」であるがゆえに、
説明もされず、選択肢から外され、
当然のように軽く扱われていく場面でした。
🧩 大きな差別ではない。だからこそ、深く刺さる
この舞台に描かれていたのは、
露骨な差別ではありません。
怒鳴られるわけでもない。
明確に拒絶されるわけでもない。
ただ、
・重要な話が回ってこない
・意思決定の場に呼ばれない
・「その立場だから」という前提で扱われる
とても静かな冷遇です。
そして私は、
この「静かさ」こそが、
現代の働く現場で最も起こりやすく、
最も見えにくい問題だと感じました。
⚖️ 「雇用形態」は、いつから人の価値を測る物差しになったのか
非正規雇用という言葉は、
本来、働き方の形式を示すものです。
能力でも、
責任感でも、
誠実さでもない。
それにもかかわらず、
いつの間にか社会では、
非正規 = 軽い
非正規 = 代替可能
非正規 = 意見を持たない存在
という無言の前提が
刷り込まれてはいないでしょうか。
舞台の主人公は、
能力がないわけでも、
怠けているわけでもありません。
ただ、
「そういう立場」として扱われている。
その事実が、
彼女の言葉を奪い、
存在感を薄くしていく。
🧠 働き方改革とは「制度」ではなく「視線」の問題ではないか
私は、働き方改革に関わる中で、
ひとつの確信を持つようになりました。
それは、
問題は制度の不足だけではない
人をどう見るかという“視線”そのものが、
職場の空気を決めている
ということです。
同じ制度があっても、
・尊重がある現場
・軽視が生まれる現場
その差は、
立場ではなく人を見るかどうか
に集約されます。
『シャイニングな女たち』は、
そのことを非常に静かな演出で突きつけてきました。
🌍 「働くこと」は、人生から切り離せない
この舞台が鋭いのは、
非正規雇用の問題を
単なる労働問題として描いていない点です。
働くことは、
・生活のためだけではなく
・自己肯定感
・人とのつながり
・「ここにいていい」という感覚
そのすべてと結びついています。
だからこそ、
立場によって雑に扱われることは、
単なる不公平ではなく、
人の尊厳に触れる問題になります。
🎭 受賞という立場で観たからこそ、胸に残った問い
この演劇は、
「非正規雇用は問題だ」と
声高に主張しません。
代わりに、
観る側に問いを残します。
私たちは、
無意識のうちに
誰かを“立場”で見ていないだろうか。
働き方改革とは、
新しい制度を作ることではなく、
人を人として扱う感覚を取り戻すこと
なのかもしれません。
🌟 おわりに:静かな違和感を、見逃さないために
『シャイニングな女たち』は、
非正規雇用という立場を通して、
- 見えなくされること
- 軽く扱われること
- 説明されないこと
その一つ一つが、
人をどれほど孤独にするかを
丁寧に描いた作品でした。
働き方改革に関わる医師として、
そして一人の観客として、
この舞台は私に
「制度以前の問い」を残しました。
それは、
あなたは、目の前の人を、
立場ではなく人として見ているか
という問いです。
演劇は、
その問いを静かに、しかし確実に
胸の奥に置いていきます。
それこそが、
この作品のいちばんの力なのだと思います。
投稿者プロフィール

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からだ整えラボ
① 医学=呼吸器・アレルギー
② 生活=腸・温活・食・睡眠・肌
③ 幸福=働き方・環境・園芸
“病気を診るだけでなく、人をまるごと診たい”
——その思いを胸に、学びを続けています。
医学的根拠 × 生活習慣 × 心の豊かさ
三位一体の医療をめざしています。
資格:
<医学・医療>医学博士、日本呼吸器学会認定呼吸器専門医、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医、日本喘息学会認定喘息専門医、日本内科学会認定内科医、日本喘息学会認定吸入療法エキスパート
<予防医学・代替医療・環境>
機能的骨盤底筋エクササイズpfilAtes™認定 インストラクター国際資格← NEW✨
カラダ取説®マスター・ジェネラル
環境省 環境人材認定事業 日本環境管理協会認定環境管理士、漢方コーディネーター、内面美容医学財団公認ファスティングカウンセラー、日本セルフメンテナンス協会認定腸内環境管理士、腸内環境解析士、日本温活協会認定温活士、薬膳調整師、管理健康栄養インストラクター、食育健康アドバイザー、日本フェムテックマイスター協会公認フェムテックマイスター®上級、公認妊活マイスター®Basic、日本スキンケア協会認定スキンケアアドバイザー、メンタル士心理カウンセラー、アーユルヴェーダアドバイザー、快眠セラピスト、安眠インストラクター
<文化・生活>
日本園芸協会認定ローズ・コンシェルジュ、ローズソムリエ®(バラ資格)
<受賞歴>
第74回日本アレルギー学会学術大会「働き方改革推進奨励賞」受賞
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