70歳からは「若返る」よりも、「年とる力」を育てたい

阿川佐和子さんの『年とる力』を読んで

先日、阿川佐和子さんの新刊『年とる力』を読みました。

表紙の帯に書かれているのは、

誰にとっても初体験

という言葉です。

確かに、70歳になったことのある人も、71歳になるのは初めてです。
80歳の方にとっても、今の80歳を生きるのは初めてです。

何歳になっても、私たちはその年齢の初心者なのだと思います。

『年とる力』は、老いに抵抗するための本ではありません

著者の阿川佐和子さんは、本書を書いた時点で72歳。

物忘れ、疲れやすさ、体の変化、シワ、趣味、友人関係、そして人生の最期まで、年齢を重ねる中で起きる出来事を、阿川さんらしいユーモアで見つめています。

本書は、

  • 今日の幸せと体の声
  • 70歳から始める趣味
  • 老いていく体との付き合い方
  • 年齢を超えた友人関係
  • 人生の最期に向けた心の持ち方

という五つの章から構成され、これからの人生を笑って過ごすための51のヒントが紹介されています。

これは、若返る方法を教える本でも、老後の正解を押しつける本でもありません。

衰えを否定せず、しかし衰えばかりを見つめず、

「今の自分に、まだ何ができるだろう」

と、少し面白がってみる本なのだと思います。

「美しくあろう」とする気持ちは、自分を大切にすること

本の中には、少し厳しく聞こえる、美輪明宏さんの

「女は女であることにあぐらをかくな」

という言葉も登場します。

これは、年齢を重ねても化粧をしなさい、若く見せなさい、という意味ではないと私は受け取りました。

人に見せるためだけではなく、

  • 髪を整える
  • 肌に触れる
  • 好きな服を着る
  • 背筋を少し伸ばす
  • 相手に心を配る

そうした小さな行動をやめないこと。

本書では、美しさとは外見だけではなく、細かな行動や思いやりを忘れないことでもある、と語られています。

高価な服や化粧品を使わなくても構いません。

診察室へいらっしゃるときに、お気に入りの服を着る。
髪を整える。
鏡を見て、少し口角を上げてみる。

それだけでも、「自分を諦めていない」という心の表れになります。

美容は、若い人だけのものではありません。

70歳、80歳になっても、自分の肌や姿を大切にすることは、自分の人生を大切にすることです。

病気があっても、「健康に年を重ねる」ことはできます

年齢を重ねれば、喘息、COPD、高血圧、糖尿病、関節痛など、何らかの病気と付き合う方が増えてきます。

しかし、病気があることと、幸せに年を重ねられないことは同じではありません。

WHOも、健康的に年齢を重ねるために、病気がまったくないことを条件とはしていません。自分が大切だと思うことを行える力、動く力、人と関わる力を保つことが重要だとしています。

厚生労働省も、高齢者には座りっぱなしを避け、体力に合わせて少しでも体を動かすことを勧めています。一般的な目安として毎日40分程度の身体活動、筋力・バランス・柔軟性を組み合わせた運動も示されていますが、数字を達成できないから意味がないわけではありません。今より少し動くだけでも第一歩です。

持病や息切れ、膝や腰の痛みがある方は、無理をせず医師と相談しながら行いましょう。

70歳は、人生の「終盤」ではなく、高齢者一年生です

若い頃と同じ体には戻れません。

できなくなることもあります。
忘れることも増えます。
病院に通う回数も多くなるかもしれません。

それでも、

できなくなったことだけを数えて、一日を終える必要はありません。

今日できたこと。
今日笑えたこと。
今日会えた人。
今日おいしいと思えたもの。

それらを一つずつ見つけることも、「年とる力」なのだと思います。

私たちのクリニックは、病気を診るだけではなく、患者さんがその人らしく生活を続けられるよう支える場所でありたいと考えています。

70歳になったら、70歳を初めて生きる。
80歳になったら、80歳を初めて生きる。

どうせ初めてなら、少しおしゃれをして、少し好奇心を持って、時には失敗を笑いながら歩いていきましょう。

年を取ることは、失っていくことだけではありません。
今まで知らなかった自分に、これから出会っていくことでもあります。

やまぐち呼吸器内科・皮膚科クリニック
院長 山口裕礼

投稿者プロフィール

院長:山口裕礼(やまぐちひろみち)
院長:山口裕礼(やまぐちひろみち)
からだ整えラボ
① 医学=呼吸器・アレルギー
② 生活=腸・温活・食・睡眠・肌
③ 幸福=働き方・環境・園芸
“病気を診るだけでなく、人をまるごと診たい”
——その思いを胸に、学びを続けています。
医学的根拠 × 生活習慣 × 心の豊かさ
三位一体の医療をめざしています。
資格:
<医学・医療>医学博士、日本呼吸器学会認定呼吸器専門医、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医、日本喘息学会認定喘息専門医、日本内科学会認定内科医、日本喘息学会認定吸入療法エキスパート
<予防医学・代替医療・環境>
機能的骨盤底筋エクササイズpfilAtes™認定 インストラクター国際資格← NEW✨
カラダ取説®マスター・ジェネラル
環境省 環境人材認定事業 日本環境管理協会認定環境管理士、漢方コーディネーター、内面美容医学財団公認ファスティングカウンセラー、日本セルフメンテナンス協会認定腸内環境管理士、腸内環境解析士、日本温活協会認定温活士、薬膳調整師、管理健康栄養インストラクター、食育健康アドバイザー、日本フェムテックマイスター協会公認フェムテックマイスター®上級、公認妊活マイスター®Basic、日本スキンケア協会認定スキンケアアドバイザー、メンタル士心理カウンセラー、アーユルヴェーダアドバイザー、快眠セラピスト、安眠インストラクター
<文化・生活>
日本園芸協会認定ローズ・コンシェルジュ、ローズソムリエ®(バラ資格)
<受賞歴>
第74回日本アレルギー学会学術大会「働き方改革推進奨励賞」受賞