医師という仕事は“無知が悪”である

ー『神様のカルテ』に描かれた、医療の真実と人間の弱さー

こんにちは、山口裕礼です。

今日は、久しぶりに心を揺さぶられた本の一節をご紹介します。
夏川草介『神様のカルテ』。
医療の現場に立つ者として、この章は深く刺さりました。

今回取り上げる場面は――
「医師の覚悟とは何か」
「患者と向き合うとはどういうことか」

を容赦なく突きつけるもの。

読み進めるうちに、
“医療とはこんなにも厳しく、そして美しいものなのだ”
と、あらためて感じさせられました。

🧩 1. 生きることに“舐めきっている”患者たち

本文では、ベテラン医師が、主人公に語りかけます。

「生きることに舐めきっているような人に、時間を費やす必要はないだけ。」

きつい言い方かもしれません。
しかし医療者なら、理解できる現実です。

・命を削ってまで飲酒する
・命を削ってまで喫煙する
・身体のサインを無視し続ける
・医師の忠告を聞かない

医者は、美辞麗句の世界にいるわけではありません。
“人の弱さ”と毎日向き合う商売です。

その中で、
患者を見抜く目が養われていく。
だからこそ医療は、時に残酷なほどリアルなのです。

医師にそのような気持ちを抱かせないためには、

患者側の努力も欠かせません。

患者が努力すればするほど、医療は必ず良い方向に回り出します。
そして何より、医師は“救える手応え”を感じるようになります。

医師も人間です。
患者さんの「本気」は、必ず医療者の心に伝わります。

🧠 2. 「医者っていう仕事は、無知がすなわち悪なのよ」

本文に登場する医療の会話は、かなり専門的です。

  • IPMN(膵管内乳頭粘液腫瘍)
  • 慢性膵炎
  • ERCP
  • 喫煙による癌発生率
  • 肝葉切除の違い

次々に投げられる質問に、主人公は必死。

そこでベテラン医師が言います。

「医者っていう仕事はね、無知であることがすなわち悪なのよ」

医師が知らない=患者の不利益。
医学は日進月歩で、
昨日の正解が今日の誤りになる世界。

だから医者は走り続けるしかない。
これは“努力不足は罪”と言われているのと同じです。

⚖️ 3. 医師は患者を選べない

本文では、こうした厳しい一節もありました。

  • できれば救いたいが、救えない患者はいる
  • スムーズに治る患者もいれば、そうではない患者もいる
  • しかし医者は、誰を診るか選べない

医療は公平であるべき。
そして“その公平を維持するために、医者が背負う緊張感”は想像以上です。

🔭 4. 医師の世界を広げる“ハッブル望遠鏡”の比喩

物語の中盤、話は「ハッブル望遠鏡」に飛びます。

「世界はまだまだ広いのよ」

ハッブル望遠鏡が見せてくれる宇宙の奥行きは、
医師が生涯かけて学ぶべき医療の果てしなさと同じ。

この比喩は本当に秀逸で、
読んでいて胸が震えました。

医療は狭い現場の繰り返しに見えて、
本当は“宇宙のように広い”。

🔥 5. 医師は“立ち尽くす瞬間”を抱えて、それでも前に進む

医師は「正解のない世界」に挑み続ける仕事。
それを支えるのは、知識でも技術でもなく、
“覚悟”だと、この章は語っています。

🌌 ■ 終わりに ― 医師としての私の心に残ったもの

今回の数ページを読みながら、
私は自分の原点を思い出しました。

  • 人の弱さを、責めずに見抜くこと
  • 無知を恐れ、学び続けること
  • 視野を狭めず、世界の広さを忘れないこと
  • 一人ひとりの患者の人生に真剣であること

医療は過酷で、本当に美しい仕事です。

そして
“医師自身の生き方を問う仕事”
でもあります。

今日のブログが、
医療を身近に感じるきっかけになれば嬉しく思います。

📚🩺✨
最後までお読みいただきありがとうございました。

投稿者プロフィール

院長:山口裕礼(やまぐちひろみち)
院長:山口裕礼(やまぐちひろみち)
からだ整えラボ
① 医学=呼吸器・アレルギー
② 生活=腸・温活・食・睡眠・肌
③ 幸福=働き方・環境・園芸
“病気を診るだけでなく、人をまるごと診たい”
——その思いを胸に、学びを続けています。
医学的根拠 × 生活習慣 × 心の豊かさ
三位一体の医療をめざしています。
資格:
<医学・医療>医学博士、日本呼吸器学会認定呼吸器専門医、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医、日本喘息学会認定喘息専門医、日本内科学会認定内科医、日本喘息学会認定吸入療法エキスパート
<予防医学・代替医療・環境>
カラダ取説®マスター・ジェネラル ← NEW✨
環境省 環境人材認定事業 日本環境管理協会認定環境管理士、漢方コーディネーター、内面美容医学財団公認ファスティングカウンセラー、日本セルフメンテナンス協会認定腸内環境管理士、腸内環境解析士、日本温活協会認定温活士、薬膳調整師、管理健康栄養インストラクター、食育健康アドバイザー、日本フェムテックマイスター協会公認フェムテックマイスター®上級、公認妊活マイスター®Basic、日本スキンケア協会認定スキンケアアドバイザー、メンタル士心理カウンセラー、アーユルヴェーダアドバイザー、快眠セラピスト、安眠インストラクター
<文化・生活>
日本園芸協会認定ローズ・コンシェルジュ、ローズソムリエ®(バラ資格)
<受賞歴>
第74回日本アレルギー学会学術大会「働き方改革推進奨励賞」受賞