【医師だから知っている“深すぎる親子関係”】親の延命に人生を捧げる子どもと、子のために最期を差し出す親

〜その背景・心理・崩壊の構造・そしてどうしても理解できない親子がいる現実〜

こんにちは。
やまぐち呼吸器内科・皮膚科クリニック
院長の 山口裕礼 です。

診療をしていると、私は時々、
胸の奥がぎゅっと締めつけられるような親子に出会います。

🟥 親の延命のために、自分の人生すべてを捧げる子ども

🟥 子どもの満足のために、自分の人生の“最終章”を差し出す親

これは映画のような美談ではありません。
医療現場では、非常にリアルな“生身の現象”です。

そして医療者として深く考えさせられます。
「なぜ、この親子関係はこうなったのか?」
「どうしてここまで歪んでしまうのか?」

今回は、その背景と本質を医師として丁寧に書いていきたいと思います。

■ ① 子どもが“親の延命に人生を捧げる”背景

まず多いのが、独身で親と強く結びついた子どもが、介護と延命にすべてを捧げてしまうケースです。

そこには医療者が何度も見てきた明確な背景があります。

1)親子が“二人きりで生きてきた家庭”

兄弟がいない、
または兄弟が遠方・関係希薄。

生活の中心は、
親と子の二人だけ

この場合、家庭というより
“二人の世界”が形成され、

✔ 親は子に依存

✔ 子は親に依存

という強固な関係が出来上がります。

これが延命執着の土台になることが多いです。

2)子が「親の役割を背負って生きてきた」場合

子どもの人生に自信が持てないと、
親を守ることで自分の価値を見出すようになります。

✔ 社会との距離がある
✔ 恋愛や結婚へのハードルが高い
✔ 親以外との深い関係が築けない

こうなると、

「親を守ること=自分の存在意義」

となり、延命が使命化します。

3)親が“あなたがいないと生きていけない”と言い続けてきた家庭

これは無意識に起きることが多く、
親自身も気づいていません。

「あなたがいてくれるから生きられる」
「あなたしか頼れないの」

こう言われ続けた子は、
親が倒れた瞬間に使命感が爆発し、

延命行動が“愛と責任の証明”になっていきます。

■ ② 一方で「子どものために自分の最期を差し出す親」もいる

これは一見すると美しい姿に見えるかもしれません。

しかし現場で見るのは、
深い自己犠牲と静かな苦痛です。

1)親の純粋な“行きすぎた愛”

親は本能的に子どもの幸せを願います。
その結果、

「子どもが望むなら、私はどうでもいい」

と本気で思い込んでしまう。

親の苦痛よりも、
子どもの感情が優先されてしまうのです。

2)子どもに“罪悪感”を背負わせたくない

高齢の親はこう思います。

「私が楽になりたいと言ったら、子どもが苦しむ」
「子どもが後悔しないようにしてあげたい」

この心理が働くと、
親の本心は表に出なくなります。

3)子の幸福が、親の生きがいになってしまっている

親が長年「子ども中心」で生きてきた場合、
自分の希望よりも、
子どもの“満足”が最優先になります。

結果として、
本当は望んでいない延命治療すら、受け入れてしまうのです。

■ ③ 医療者が最も苦しむ瞬間

それは、

🟥 親の声が消える瞬間

🟥 子どもの要求だけが響く瞬間

です。

本来の医療は、
“患者本人の幸せ”のために存在します。

でもこのような家族関係になると、
治療は親のためではなく、
子の自己満足のためになってしまう。

これは医療者にとって非常に苦しい状況です。

■ ④ そして――どうしても理解し合えない親子もいる

医療者がどれだけ時間をかけても、
説明を尽くしても、

全く噛み合わない親子

が現実にいます。

理由は明確です。

✔ 家族の価値観が長年かけて固まっている

✔ 親と子の役割が“固定化”しすぎている

✔ 過去の体験・傷・依存がそのまま構造になっている

✔ 家族以外の価値観が入り込めない

こうなると医療者の言葉は届きません。

医療者は、
理解できなくとも、
救えなくとも、

「仕方がない」と受け入れざるを得ません。

これは諦めではなく、
その家族の歴史を尊重する姿勢でもあります。

■ ⑤ 最後に──医師としての願い

どれほど複雑で、
どれほど深い背景があったとしても、

私は強く願っています。

🟦 親が「自分の望み」を持っていてほしい

🟦 子が「親の幸せ」を大切にしてほしい

🟦 延命は“家族の満足”ではなく“本人の幸せ”に基づいてほしい

親だけが苦しむ医療も、
子どもだけが満足する医療も、
どちらも本当の医療ではありません。

どうか、
“あなた自身”の幸せも大切にしてください。
それが、あなたの家族も救います。

投稿者プロフィール

院長:山口裕礼(やまぐちひろみち)
院長:山口裕礼(やまぐちひろみち)
からだ整えラボ
① 医学=呼吸器・アレルギー
② 生活=腸・温活・食・睡眠・肌
③ 幸福=働き方・環境・園芸
“病気を診るだけでなく、人をまるごと診たい”
——その思いを胸に、学びを続けています。
医学的根拠 × 生活習慣 × 心の豊かさ
三位一体の医療をめざしています。
資格:
<医学・医療>医学博士、日本呼吸器学会認定呼吸器専門医、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医、日本喘息学会認定喘息専門医、日本内科学会認定内科医、日本喘息学会認定吸入療法エキスパート
<予防医学・代替医療・環境>
カラダ取説®マスター・ジェネラル ← NEW✨
環境省 環境人材認定事業 日本環境管理協会認定環境管理士、漢方コーディネーター、内面美容医学財団公認ファスティングカウンセラー、日本セルフメンテナンス協会認定腸内環境管理士、腸内環境解析士、日本温活協会認定温活士、薬膳調整師、管理健康栄養インストラクター、食育健康アドバイザー、日本フェムテックマイスター協会公認フェムテックマイスター®上級、公認妊活マイスター®Basic、日本スキンケア協会認定スキンケアアドバイザー、メンタル士心理カウンセラー、アーユルヴェーダアドバイザー、快眠セラピスト、安眠インストラクター
<文化・生活>
日本園芸協会認定ローズ・コンシェルジュ、ローズソムリエ®(バラ資格)
<受賞歴>
第74回日本アレルギー学会学術大会「働き方改革推進奨励賞」受賞