「正義」は人を平気で裁く。舞台『大地の子』を観て、私がしばらく席を立てなかった理由。

こんにちは。山口裕礼です。

本日、舞台『大地の子』を観劇してきました。

山崎豊子さんの名作として知られるこの物語。

劇場に明かりが灯っても、私はしばらくの間、椅子から立ち上がることができませんでした。

感動して泣いたからではありません。

不条理に怒ったからでもありません。

ただ、「言葉にならない何か」が、重たい鉛のように胸の奥に沈んでいたからです。

この作品が突きつけてきたのは、歴史の記録ではなく「人間という生き物の業」そのものでした。

🌏 「国」と「人間」は、別の生き物だ

この作品は、戦争の物語です。 けれど、本当に描かれているのは「国家」ではなく、そこに生きる「人間」でした。

国家は、ときに正義の仮面をかぶって、たった一人の個人を無慈悲に押し潰します。

そして恐ろしいのは、その“正義”が、誰かの痛みを踏み台にして進んでいくことを何とも思わない点にあります。

舞台を観ていて、何度も思いました。 国はあまりにも大きい。けれど、一人の人間の人生は、たった一度しかありません。

🧒 「血のつながり」より、もっと強いもの

『大地の子』は、私たちに逃げ場のない問いを突きつけます。

「親とは何か」「家族とは何か」「恩とは何か」。

血がつながっていることは、動かしようのない事実です。

でも、「事実」だけでは、人は生き延びられません。

  • 毎日、ごはんをくれた
  • 必死で守ってくれた
  • ときには厳しく叱ってくれた
  • 泣いているときに抱きしめてくれた
  • どんなときも、見捨てなかった

その泥臭い積み重ねこそが、人を人として育てていく。

血縁よりも、もっと現実的で、もっと強固な絆がある。

それは「日々の関わり」という名の体温なのだと痛感しました。

⚖️ 「善意」と「打算」は、常に同居する

この作品は、単なる美しい感動話では終わらせてくれません。

誰かの優しさの裏には、打算が混じっていることもある。

誰かの救いの手は、純粋な善意だけで説明できないこともある。

でもそれは、決して「汚れている」という意味ではないはずです。

人間とは、本来そういうものだと、静かに諭されている気がしました。

もし世界が「純粋な善意」だけで回っているなら、歴史はこんな残酷な形になっていないでしょう。

それでもなお、人は誰かを助け、誰かに助けられ、その間に逃れようのない「情」が生まれてしまう。

きれいごとではなく、かといって冷酷でもない。

これこそが、『大地の子』の残酷で、かつ最も優しい部分でした。

🕊️ 「正しさ」は、武器よりも簡単に人を壊す

作中で最も震えたのは、「“正しい側”にいる人ほど、残酷になれる」という事実です。

  • 社会の空気
  • 時代の空気
  • 集団の論理

ひとたびその大きな流れに飲まれると、人は平気で誰かを裁き、追い詰めることができます。

それは、数十年前の大陸の話ではありません。

今の私たちも同じ構造の中にいます。

違うのは、武器が銃から「言葉」や「SNS」、そして「正義の旗」に変わっただけ。

私たちは今も、無意識に誰かを踏み台にしていないでしょうか。

🌱 それでも、人は折れながら生きていく

観劇後、最後に心に残ったのは、意外にも希望に近いものでした。

「人は、折れながらでも、生きてしまう」ということ。

過去を克服するわけじゃない。

すべてを忘れるわけでも、納得するわけでもない。

それでも、朝が来るから生きる。

そして、誰かのふとした一言や、誰かの沈黙、誰かが差し出した手によって、もう一度だけ前に進めてしまう。

それが「人間の底力」なのか「生きるしかない運命」なのかは分かりません。

けれど『大地の子』は、「生きることの意味は、きれいに言語化なんてできない」ということを、真正面から見せつけてくれました。

✨ 結びに代えて

『大地の子』は、政治や歴史を語る作品でもあります。

でも、私に残った本質はそこではありませんでした。

人はどこに属するのか。親とは、恩とは、正しさとは何か。

そして、それでも生きるとはどういうことか。

この問いが、観客の胸に「重たい置き土産」として残ります。

そして観た人は、きっとしばらくの間、物事を「簡単に断言すること」ができなくなる。

それこそが、この作品の持つ真の力なのだと私は思います。

投稿者プロフィール

院長:山口裕礼(やまぐちひろみち)
院長:山口裕礼(やまぐちひろみち)
からだ整えラボ
① 医学=呼吸器・アレルギー
② 生活=腸・温活・食・睡眠・肌
③ 幸福=働き方・環境・園芸
“病気を診るだけでなく、人をまるごと診たい”
——その思いを胸に、学びを続けています。
医学的根拠 × 生活習慣 × 心の豊かさ
三位一体の医療をめざしています。
資格:
<医学・医療>医学博士、日本呼吸器学会認定呼吸器専門医、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医、日本喘息学会認定喘息専門医、日本内科学会認定内科医、日本喘息学会認定吸入療法エキスパート
<予防医学・代替医療・環境>
機能的骨盤底筋エクササイズpfilAtes™認定 インストラクター国際資格← NEW✨
カラダ取説®マスター・ジェネラル
環境省 環境人材認定事業 日本環境管理協会認定環境管理士、漢方コーディネーター、内面美容医学財団公認ファスティングカウンセラー、日本セルフメンテナンス協会認定腸内環境管理士、腸内環境解析士、日本温活協会認定温活士、薬膳調整師、管理健康栄養インストラクター、食育健康アドバイザー、日本フェムテックマイスター協会公認フェムテックマイスター®上級、公認妊活マイスター®Basic、日本スキンケア協会認定スキンケアアドバイザー、メンタル士心理カウンセラー、アーユルヴェーダアドバイザー、快眠セラピスト、安眠インストラクター
<文化・生活>
日本園芸協会認定ローズ・コンシェルジュ、ローズソムリエ®(バラ資格)
<受賞歴>
第74回日本アレルギー学会学術大会「働き方改革推進奨励賞」受賞