「自分の体に、いくらの値段をつけていますか」検査代・薬代を惜しむ人に医師が伝えたいこと

検査代・薬代を惜しむ人に医師が伝えたいこと
「お金がかかるので、検査は最低限でいいです」
「薬もなるべく少なく、とりあえず安く済ませたいです」
診察室で、患者さんから毎日のように聞く言葉です。
物価が上がり、生活そのものが大変な今、そのお気持ちは痛いほどよくわかります。病院に来るだけでも、検査をするだけでもお金はかかります。私は決して「お金のことを気にするな」と言いたいわけではありません。医療費は現実的な問題です。
ただ、それでも私は、ときどき診察室で静かに問いたくなるのです。
「あなたは、ご自身の体にいくらの値段をつけていますか?」と。
日本の医療は「夢のよう」なのに、なぜ遠ざけてしまうのか
日本の公的医療保険制度は、世界的に見れば「夢のようだ」と言われるほど恵まれています。自己負担1〜3割で、すぐに専門医にアクセスでき、高度な検査を受けられる国は滅多にありません。
海外では、診察を受けるだけで高額な費用がかかり、検査の前にまず「支払い能力」を心配しなければならない国もたくさんあります。
しかし、この恵まれた環境にいるからこそ、皮肉にもその価値に気づかず、「検査代がもったいない」「薬代が引かれるのが嫌だ」と、必要な医療を削ってしまう方が後を絶ちません。
その“最低限”は、本当にあなたの体を守るための最低限ですか?
それとも、ただ「今日の支払いを減らすため」の最低限になっていませんか?
医師の「必要最低限」と、患者の「必要最低限」の決定的なズレ
医療において「必要最低限」は鉄則です。無駄な検査はしないし、不要な薬は出しません。しかし、医師と患者さんの間には、この言葉の意味に決定的なズレが生じることがあります。
- 医師が考える必要最低限:病気を見逃さず、安全に治療するために「これだけは絶対に譲れない」ライン
- 患者さんが言う必要最低限:「今日の会計をできるだけ安くすること」
たとえば、長引く咳。「ただの風邪」ならいいですが、喘息、肺炎、あるいは肺がんなど、見逃してはいけない病気が隠れていることがあります。
「検査はお金がかかるから、薬だけでいいです」
その場で数千円を節約できたとしても、病気が進行してから見つかれば、結果として何倍もの治療費、長い時間、そして何より大切な体力を失うことになります。
「安く済ませたつもりがいちばん高くつく」のは、医療の現場では日常茶飯事なのです。
「体は、安く扱えば安く返ってくる」という現実
少し厳しい言い方ですが、人間の体は扱い方に応じて返事をします。
雑に扱えば雑に返ってき、大切に扱えば大切に応えてくれます。
食事を適当にする、睡眠を削る、症状を放置する、お金がもったいないからと必要な検査を避ける……。そうやって体を後回しにしていると、体はいつか静かに、しかし取り返しのつかない悲鳴を上げます。
高い検査や大量の薬が良いわけではありません。大切なのは、「必要なところに、必要なお金と時間をかける」こと。
これは浪費ではなく、自分の未来への投資です。
「検査代はもったいない」と言いながら、タバコ・お酒にお金を払っていませんか?
外来で患者さんとお話ししていて、少し複雑な気持ちになる瞬間があります。
- 「検査代がもったいない」と言いながら、毎日のタバコ代は払っている
- 「薬代を減らしたい」と言いながら、毎晩のお酒はやめない
- 「血糖値が心配」と言いながら、甘い飲み物やお菓子を買い続ける
嗜好品や人生の楽しみをすべて否定するつもりはありません。ただ、本当にお金を大切にしたいのであれば、一度胸に手を当てて考えてみてください。
「あなたは、自分の体を壊すものにはお金を払い、体を守るものにはお金を惜しんでいませんか?」
病気を作る生活には投資し、病気を治す医療には出し渋る。もしそうであれば、お金の使い方を少し見直すだけで、あなたの体は劇的に変わるはずです。
本当に苦しいときは、どうか「正直に」相談してください
一方で、本当に経済的な事情で医療費が重荷になっている方がいることも、私はよく知っています。生活費や介護費で余裕がなく、仕事を休むことすら難しい。そんな方に「もっとお金をかけろ」と言うつもりは毛頭ありません。
もし本当に困っているなら、診察室で正直に相談してください。
「先生、今月は医療費が厳しいです。優先順位をつけてもらえますか?」
そう言っていただければ、私たちは一緒に考えることができます。
- 今日絶対にやるべき検査と、次回に回せる検査の仕分け
- ジェネリック医薬品への切り替えや、薬の処方日数の調整
- 通院間隔の工夫
医療費の相談は、恥ずかしいことではまったくありません。
「安く済ませたい」と「体を放置する」のは違います。
抱え込まずに、味方である医師を頼ってください。
本当の節約は、医療を避けることではなく「病気をこじらせないこと」
医療費を賢く減らす唯一の方法。それは、必要な治療を拒むことではなく、「病気を悪化させないこと」です。
高血圧や糖尿病、喘息を放置せず、軽いうちにコントロールする。入院になる前に手を打つ。これが最も現実的で、いちばん効果の高い節約です。
スマホや車なら、壊れたら買い替えられます。しかし、あなたの肺も、心臓も、血管も、皮膚も、完全に新品へ取り替えることはできません。
今日の数千円を惜しんで将来の健康を失うのか。それとも、今日必要な医療を受けて、これからの10年、20年の人生を守るのか。
その選択の権利は、他の誰でもない、あなた自身にあります。
どうかご自身の体に、安すぎる値段をつけないであげてください。
投稿者プロフィール

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からだ整えラボ
① 医学=呼吸器・アレルギー
② 生活=腸・温活・食・睡眠・肌
③ 幸福=働き方・環境・園芸
“病気を診るだけでなく、人をまるごと診たい”
——その思いを胸に、学びを続けています。
医学的根拠 × 生活習慣 × 心の豊かさ
三位一体の医療をめざしています。
資格:
<医学・医療>医学博士、日本呼吸器学会認定呼吸器専門医、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医、日本喘息学会認定喘息専門医、日本内科学会認定内科医、日本喘息学会認定吸入療法エキスパート
<予防医学・代替医療・環境>
機能的骨盤底筋エクササイズpfilAtes™認定 インストラクター国際資格← NEW✨
カラダ取説®マスター・ジェネラル
環境省 環境人材認定事業 日本環境管理協会認定環境管理士、漢方コーディネーター、内面美容医学財団公認ファスティングカウンセラー、日本セルフメンテナンス協会認定腸内環境管理士、腸内環境解析士、日本温活協会認定温活士、薬膳調整師、管理健康栄養インストラクター、食育健康アドバイザー、日本フェムテックマイスター協会公認フェムテックマイスター®上級、公認妊活マイスター®Basic、日本スキンケア協会認定スキンケアアドバイザー、メンタル士心理カウンセラー、アーユルヴェーダアドバイザー、快眠セラピスト、安眠インストラクター
<文化・生活>
日本園芸協会認定ローズ・コンシェルジュ、ローズソムリエ®(バラ資格)
<受賞歴>
第74回日本アレルギー学会学術大会「働き方改革推進奨励賞」受賞
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