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職業性ぜん息:仕事が引き金?

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仕事と健康のバランスをとることが難しい病気

私たちは日々、さまざまな形で喘息と向き合っている医師の一人として、今日は「職業性ぜん息」について皆さんにお話ししたいと思います。

職業性ぜん息とは?

仕事場での症状が特に酷い、あるいは特定の業務を行う際にしか喘息の症状が現れない――そのような経験はありませんか?

これは特定の労働環境下で、特定の職業性物質にさらされることにより発症する「職業性ぜん息」の可能性があります。

職業性ぜん息の原因となる物質はさまざまで、煙や塩素などの刺激物質や、アレルギー反応を引き起こす感作物質などが含まれます。

そしてこれらの物質は、その分子量によって「高分子量物質」と「低分子量物質」に分類されます。

どのような職種がリスクを抱えている?

職業性ぜん息を引き起こしやすい職種とその原因物質をいくつか挙げてみましょう。

高分子量物質:例えば看護師や医師、ゴム手袋使用者はラテックスに、ビニールハウス内作業者や生花業者はキノコ胞子や花粉に、また実験動物取扱者、獣医、調教師は動物の毛やフケ、尿タンパクにさらされるリスクがあります。

低分子量物質:例えば製茶業者は精製緑茶成分(エピガロカテキンガレート)、美容師や理容師、毛皮染色業者は過硫酸塩やパラフェニレンジアミン、そして製材業者、大工、家具製造業者は木材粉じん(米杉、ラワンなど)などにさらされるリスクがあります。

これらは一部の例ですが、もし自身の職場がこれらのリスクを抱えている可能性があると感じたら、次に述べる対策を講じることが重要です。

診断と対策

職業性ぜん息の診断には、医師の問診が非常に重要です。

患者さんは、その仕事を始めてから症状が出現するまでの過程、最初に喘息症状が出現したときに24時間以内に原因となる物質にさらされたか、休日には症状が改善するか、職場でアレルギー性鼻炎やアレルギー性結膜炎の症状が悪化したかどうかなどを詳しく医師に伝える必要があります。

治療について

職業性ぜん息の治療では、一般的な喘息と同様に薬物治療が行われます。

しかし原因物質にさらされ続けると症状がひどくなり、呼吸機能も低下します。

そのため、職業性ぜん息と診断されたら、原則として原因物質を完全に排除しなくてはなりません。

ただし、職場を変えることはなかなか難しいこともあります。

配置転換などが可能であれば理想的ですが、現実的には、原因物質をできるだけ避け、マスクをする、換気をするなどの対策をしつつ、喘息の薬物治療を継続していくことになるでしょう。

それでも症状が悪化する場合、医師とよく相談し、必要であれば職業を変えることも視野に入れるべきです。

さいごに

職業性ぜん息は、仕事と健康のバランスをとることが難しい病気ですが、適切な対策と医療の支援によって、その症状は管理可能です。

自分の体と健康を大切に、必要なら専門家に相談することを忘れないでください。

投稿者プロフィール

院長:山口裕礼(やまぐちひろみち)
院長:山口裕礼(やまぐちひろみち)
2017年1月、希望が丘(神奈川県横浜市)にて、やまぐち呼吸器内科・皮膚科クリニックを開院しました。