医師と患者の関係が終わる時
医師と患者の関係は、一つ一つがかけがえのないものであり、時に深く、長期にわたるものです。
しかし、その関係が終結する時も必ず訪れます。
患者が治療を終える場合もあれば、来なくなる、転院する、紹介される、または悲しいことに他界するなど、様々な別れがあります。
この文章では、そうした医師と患者の関係性の終わりについて考えてみたいと思います。
1. 病気の完治
最も理想的な別れは、患者が治癒し、医師の治療が不要になる時です。
患者の病気が完治することで、医師と患者の関係が終わりを迎えることは、医師にとっても喜ばしい瞬間です。
完治は、医療の目的が達成された証であり、患者にとっても医師にとっても満足感が残る別れです。
2. 患者さんが来なくなる場合
患者さんが急に来なくなる場合、その理由は様々です。
自己判断で治療が完了したと感じる方もいれば、経済的な問題や交通手段の不便さ、医療への不信感などが理由となることもあります。
慢性疾患を抱えている方の場合、通院をやめることが必ずしも「治癒」を意味するわけではありません。
特に、精神的な要因や社会的な問題が絡むことがあり、医師としてはその背景を理解し、できる限りの支援をしたいと感じます。
3. 転院や紹介
医師として、患者の治療のために他の専門医や施設への転院や紹介を行うことがあります。
これは、患者の病状や治療内容に応じて、最適なケアを提供するための決断です。
しかし、患者にとっては大きな変化であり、不安や葛藤を抱えることも少なくありません。
そのため、紹介状を出す際には、しっかりとした説明とサポートを行い、患者が安心して次の治療に臨めるようにすることが重要です。
4. 患者の他界
長年診療してきた患者が他界すると、医師として大きな喪失感を抱くことがあります。
特に、最期まで付き添ってきた患者との別れは辛く、無力感を感じることも少なくありません。
しかし、医師としてできる限りのケアを提供し、患者とその家族に寄り添えたという思いが、時には慰めとなります。
生命の尊厳について考えさせられる場面でもあり、この経験が次の患者との関わり方にも影響を与えることがあります。
5. 信頼関係の崩壊
時には、治療方針や診療内容に対する患者の不満から信頼関係が崩れることもあります。
医師としては最善を尽くしていても、全ての患者と完璧な理解が得られるわけではありません。
このような時、他の医療機関に患者を紹介することが必要となる場合もあります。
信頼が揺らいだ時、患者にとっても、より信頼できる医師を見つけることが治療の一環となり得ます。
医師と患者の関係性の心理
患者と医師の関係は、単なる医療提供者と受診者の関係ではなく、互いに信頼し合い、協力して病気と向き合うものです。
しかし、その関係が終結する際には、さまざまな感情が生じます。
患者が来なくなることや他界することは、医師としての成長や反省を促し、次の診療に生かされることもあります。
まとめ
医師と患者の関係は、多様な形で始まり、多様な形で終わります。
それは、医療の現場における日常的な事象でありながら、一つ一つが深い意味を持ちます。
どんな別れであっても、医師として患者の健康と幸せを願い続けることが、医療の本質であると言えるでしょう。
投稿者プロフィール
- 2017年1月、希望が丘(神奈川県横浜市)にて、やまぐち呼吸器内科・皮膚科クリニックを開院しました。
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