――「頑張らなくていい」は、本当に正しいのか?

📘「どうしても頑張れない人」から考える

こんにちは😊
やまぐち呼吸器内科・皮膚科クリニック
院長の 山口裕礼(やまぐち ひろみち)です。

診察室で、こんな声をよく聞きます。

  • 「やらなきゃいけないのに、体が動きません」
  • 「頑張りたい気持ちはあるのに、どうしても無理で…」
  • 「自分は怠けているだけでしょうか」

今日は、最近読んだ2冊の本から、
患者さんに伝えたい「ひとつの答え」を考えてみたいと思います📖

① 現実としての「頑張れない」

宮口幸治『どうしても頑張れない人たち』(新潮新書)

まず紹介したいのが、
児童精神科医・宮口幸治先生の著書です。

この本では、
「頑張れない人」を 気合や根性の問題として扱うことの危険性 が、
非常に具体的に書かれています。

📖 本文からの引用

「“頑張らなくていい”という言葉は、
場合によっては無責任であり、
本来支援が必要な人を放置することにもなり得る」

—— 宮口幸治
『どうしても頑張れない人たち』(新潮新書)

また、次のようにも書かれています。

「このままでいい、という言葉は
問題を見ないこととは違う」

—— 宮口幸治
『どうしても頑張れない人たち』(新潮新書)

🩺 医師としてとても大事だと思う点

この本が一貫して伝えているのは、

👉 「頑張れない=甘え」ではない
👉 しかし「頑張らなくていい」で終わらせてはいけない

という、非常に現実的な視点です。

  • 認知の特性
  • 発達特性
  • 疲弊し切った神経系
  • うつ状態・自律神経の破綻

こうした背景を無視して
「頑張らなくていいよ」と言うことは、
優しさではなく、放置になることもある。

これは、医療の現場でもまったく同じです。

② 物語が教えてくれる「限界のサイン」

夏川草介『君を守ろうとする猫の話』(小学館)

ここで、別の角度からの引用として、
夏川草介さんの小説を紹介します🐈📚

これは医学書ではなく、物語です。
しかし、人が壊れる「直前」の感覚が、とても丁寧に描かれています。

📖 作中の言葉(物語からの引用)

「もう我慢しなくていい」

—— 夏川草介
『君を守ろうとする猫の話』(小学館)

また、主人公が追い詰められていく場面では、

「人のことなんて考えていたら、
君の人生が壊れてしまう」

—— 夏川草介
『君を守ろうとする猫の話』(小学館)

という言葉が、強い警告として語られます。

🐾 これは「甘やかし」ではない

この物語で描かれているのは、

  • もう限界を超えている人
  • 自分の異変にすら気づけなくなっている人
  • 「頑張る」以外の選択肢を失った人

に対しての、
最後のブレーキのような言葉です。

⚠️ 「頑張らなくていい」が危険になる瞬間

ここが、今日いちばん伝えたいところです。

🔺 危険なのは、この2つを混同すること

状況本当に必要なこと
まだ余力がある小さな挑戦・環境調整
すでに限界休息・治療・支援

  • まだ回復可能な人に「何もしなくていい」と言う
  • 明らかに支援が必要な人に「自己責任」を押し付ける

👉 どちらも、人を壊します

🌱 医師としての「ひとつの答え」

2冊の本を通して、
私がたどり着いた答えはこれです。

「頑張る・頑張らない」ではなく
 “今、その人の体と心は何を求めているか”を考える

  • 薬が必要なとき
  • 休息が必要なとき
  • 環境を変える必要があるとき

それを一緒に見極めるのが、
医療の役割だと思っています。

🍀 最後に:患者さんへ

もし今、

  • 動けない自分を責めている方
  • 「頑張れない=ダメな人間」と思っている方

がいたら、こう伝えたいです。

🌿 あなたが壊れないことの方が、ずっと大事です
🌿 でも、独りで抱え込まなくていい

「頑張れない理由」には、
必ず身体的・心理的な背景があります。

つらいときは、
どうぞ遠慮なくご相談ください😊
一緒に、“今できる一歩”を考えていきましょう。

✍️
やまぐち呼吸器内科・皮膚科クリニック
院長 山口裕礼(やまぐち ひろみち)

投稿者プロフィール

院長:山口裕礼(やまぐちひろみち)
院長:山口裕礼(やまぐちひろみち)
からだ整えラボ
① 医学=呼吸器・アレルギー
② 生活=腸・温活・食・睡眠・肌
③ 幸福=働き方・環境・園芸
“病気を診るだけでなく、人をまるごと診たい”
——その思いを胸に、学びを続けています。
医学的根拠 × 生活習慣 × 心の豊かさ
三位一体の医療をめざしています。
資格:
<医学・医療>医学博士、日本呼吸器学会認定呼吸器専門医、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医、日本喘息学会認定喘息専門医、日本内科学会認定内科医、日本喘息学会認定吸入療法エキスパート
<予防医学・代替医療・環境>
機能的骨盤底筋エクササイズpfilAtes™認定 インストラクター国際資格← NEW✨
カラダ取説®マスター・ジェネラル
環境省 環境人材認定事業 日本環境管理協会認定環境管理士、漢方コーディネーター、内面美容医学財団公認ファスティングカウンセラー、日本セルフメンテナンス協会認定腸内環境管理士、腸内環境解析士、日本温活協会認定温活士、薬膳調整師、管理健康栄養インストラクター、食育健康アドバイザー、日本フェムテックマイスター協会公認フェムテックマイスター®上級、公認妊活マイスター®Basic、日本スキンケア協会認定スキンケアアドバイザー、メンタル士心理カウンセラー、アーユルヴェーダアドバイザー、快眠セラピスト、安眠インストラクター
<文化・生活>
日本園芸協会認定ローズ・コンシェルジュ、ローズソムリエ®(バラ資格)
<受賞歴>
第74回日本アレルギー学会学術大会「働き方改革推進奨励賞」受賞