バラが教えてくれる「自然」と「薬」と「手をかける」ということ

山口裕礼 からだ整えラボ
写真のバラは、私が年に数回メンテナンスに入らせていただいている、ある方のお庭のバラです。
その方は、バラにものすごく詳しいわけではありません。けれど、バラが好きで、大切に育てておられます。
昨年はあまり手を加えなかったため、病害にやられてしまい、春にきれいに咲きませんでした。
ところが今年は、冬にしっかり肥料を入れ、芽吹きと同時に殺菌・消毒の予防投与を行いました。
その結果、今年は見事に咲きました。
昨年は、あまり手をかけられませんでした
昨年は、私自身があまり手を入れることができませんでした。
すると、やはり病害にやられてしまい、春の花つきは今ひとつでした。
バラは正直です。
水、肥料、日当たり、風通し、剪定、病害虫の予防。 それらが整っていないと、目に見える形で調子を崩します。
葉が落ちる。つぼみが傷む。花数が減る。本来の色や香りが出にくくなる。
バラは自然の植物ですが、「自然に任せる」だけでいつも美しく咲くわけではありません。
今年は、冬からしっかり整えました
今年は違いました。
冬の間にしっかり肥料を入れました。
そして、芽吹きと同時に、病気が出てからではなく、病気が出る前から殺菌・消毒を行いました。
つまり、予防的な管理を丁寧に続けたのです。
その結果、今年は見事に咲きました。
赤、ピンク、オレンジ、白。 それぞれのバラが、それぞれの色と香りを返してくれました。
バラは基本的に難しい植物です
バラは、基本的に難しい植物です。
もちろん、中にはあまり手をかけなくても育つ「強いバラ」もあります。
病気に強く、環境への適応力が高く、少し放っておいても咲いてくれるバラもあります。
一方で、とても繊細なバラもあります。
黒星病に弱い。うどんこ病に弱い。暑さに弱い。風通しが悪いとすぐに調子を崩す。
けれど、そういう手のかかるバラほど、驚くような色味、奥深い香り、花びらの重なり、咲いたときの存在感を持っていたりします。
手をかけた分だけ、返してくれる。
こちらが整えれば、向こうも応えてくれる。
バラを見ていると、いつもそう感じます。
これは、人間のからだにも似ています
これは、人間のからだにも似ています。
世の中には、「薬に頼りたくない」「自然が一番いい」「添加物は避けたい」「できるだけ有機のものを選びたい」と考える方がいます。
それは、それでよいと思います。
自然を大切にする。食べるものに気をつける。生活を整える。からだに余計な負担をかけない。
これは、とても大切なことです。
ただし、それだけでは病気になってしまう人も、実際にいます。
同じ環境にいても、病気になりにくい人もいれば、なりやすい人もいます。
同じ食事をしていても、血糖が上がりやすい人もいれば、そうでない人もいます。
同じ季節を過ごしていても、喘息が悪化する人もいれば、何ともない人もいます。
同じスキンケアをしていても、皮膚が荒れやすい人もいれば、平気な人もいます。
それは、努力が足りないからではありません。
気合いが足りないからでもありません。
自然に逆らっているからでもありません。
強いバラもあれば、繊細なバラもある
体質、遺伝、環境、年齢、ホルモン、自律神経、免疫、生活背景。
人のからだは、一人ひとり違います。
バラにも、強い品種と繊細な品種があります。
人にも、強く見えるからだと、繊細に反応しやすいからだがあります。
そして大事なのは、「弱いこと」は、決して劣っていることではない、ということです。
繊細なバラには、繊細なバラにしか出せない美しさがあります。
手がかかるバラほど、咲いたときの感動が深いことがあります。
人も同じです。
からだが敏感な人。気圧や季節の変化に反応しやすい人。アレルギーが出やすい人。皮膚が荒れやすい人。咳が長引きやすい人。疲れが表に出やすい人。
そういう方は、決して「弱い人」ではありません。
むしろ、からだの反応を細かく感じ取れる人でもあります。
薬は、敵ではありません
バラに肥料が必要なように、人には栄養が必要です。
バラに風通しが必要なように、人には休息や睡眠が必要です。
バラに剪定が必要なように、人には生活の整理が必要です。
そして、バラに病気を防ぐための予防的な手入れが必要なように、人にも、薬や医学的な介入が必要な場面があります。
薬は、敵ではありません。
もちろん、薬を使わずに済むなら、それに越したことはありません。
必要のない薬を増やす必要はありません。
生活を整えることで改善できるものは、まずそこを整えるべきです。
しかし、必要な人にとって、薬は「不自然なもの」ではなく、その人のからだを守るための支えになります。
喘息の吸入薬。皮膚炎の外用薬。アレルギーの薬。高血圧や糖尿病の薬。感染症に対する抗菌薬。
これらは、ただ症状を押さえ込むためだけのものではありません。
炎症を抑え、悪化を防ぎ、日常を守り、未来のダメージを減らすために使うものです。
予防は、病気が出る前に始めるもの
バラも、病気が広がってから慌てて対応するより、芽吹きの段階から予防しておく方が、結果的にきれいに咲きます。
人間のからだも、同じです。
ひどくなってから我慢できずに受診するより、崩れ始めた段階で整える。
毎年同じ季節に悪くなるなら、前もって備える。
症状が軽いうちに炎症を抑える。
自分の弱点を知り、先回りして管理する。
これが、からだを整えるということです。
自然派を否定しない。ただし、強要してはいけない
自然派の考え方を否定する必要はありません。
無農薬でバラを育てることに挑戦する人もいます。
食事や生活を自然に近づけようと努力する人もいます。
それは素晴らしいことです。
ただ、それを他人に強要してはいけません。
「薬を使うなんてよくない」
「自然に治すべきだ」
「化学的なものは全部悪い」
「薬に頼るから弱くなる」
そういう言葉で、薬を必要としている人を追い詰めてはいけません。
同じバラでも、必要な手入れは違います。
同じ人間でも、必要な医療は違います。
強いバラには強いバラの育て方があります。
繊細なバラには繊細なバラの守り方があります。
強い人には強い人の整え方があり、繊細な人には繊細な人の整え方があります。
大切なのは、自然か薬かの二択ではありません
大切なのは、自然か薬か、という二択ではありません。
自然を大切にしながら、必要なときには医学の力も借りる。
生活を整えながら、必要なときには薬で炎症を抑える。
無理に我慢するのではなく、自分のからだに合った方法で守っていく。
それが、これからの医療に必要な考え方だと思います。
今年、美しく咲いたバラたちは、「手をかけること」の大切さを教えてくれました。
放っておくことが自然なのではありません。
必要な手入れをすることもまた、自然の一部です。
やまぐち呼吸器内科・皮膚科クリニック
山口裕礼
からだ整えラボ
投稿者プロフィール

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からだ整えラボ
① 医学=呼吸器・アレルギー
② 生活=腸・温活・食・睡眠・肌
③ 幸福=働き方・環境・園芸
“病気を診るだけでなく、人をまるごと診たい”
——その思いを胸に、学びを続けています。
医学的根拠 × 生活習慣 × 心の豊かさ
三位一体の医療をめざしています。
資格:
<医学・医療>医学博士、日本呼吸器学会認定呼吸器専門医、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医、日本喘息学会認定喘息専門医、日本内科学会認定内科医、日本喘息学会認定吸入療法エキスパート
<予防医学・代替医療・環境>
機能的骨盤底筋エクササイズpfilAtes™認定 インストラクター国際資格← NEW✨
カラダ取説®マスター・ジェネラル
環境省 環境人材認定事業 日本環境管理協会認定環境管理士、漢方コーディネーター、内面美容医学財団公認ファスティングカウンセラー、日本セルフメンテナンス協会認定腸内環境管理士、腸内環境解析士、日本温活協会認定温活士、薬膳調整師、管理健康栄養インストラクター、食育健康アドバイザー、日本フェムテックマイスター協会公認フェムテックマイスター®上級、公認妊活マイスター®Basic、日本スキンケア協会認定スキンケアアドバイザー、メンタル士心理カウンセラー、アーユルヴェーダアドバイザー、快眠セラピスト、安眠インストラクター
<文化・生活>
日本園芸協会認定ローズ・コンシェルジュ、ローズソムリエ®(バラ資格)
<受賞歴>
第74回日本アレルギー学会学術大会「働き方改革推進奨励賞」受賞
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