怪物と戦う人へ!生きづらさに飲み込まれないために、まず「からだ」を整える

怪物と戦う人へ
生きづらさに飲み込まれないために、まず「からだ」を整える

朝日新聞のコラム「天声人語」で、哲学者ニーチェの言葉が紹介されていました。

怪物と戦う者は、その過程で自らも怪物にならぬよう気をつけなければならない。
深淵を長く覗き込むならば、深淵もまたこちらを覗き込む。

この言葉は、ニーチェの『善悪の彼岸』に出てくる有名な一節です。

ここで出てくる深淵は、「しんえん」と読みます。

意味は、底が見えないほど深いところ。そして比喩的には、人間の心の奥底にある不安、怒り、絶望、逃げ場のないように感じる暗い場所を指します。

つまりニーチェは、理不尽なもの、苦しいもの、暗いものと向き合い続けるとき、知らないうちに自分自身までその暗さに飲み込まれてしまうことがある、と警告しているのだと思います。

世の中には、毎日どこかで「生きづらさ」を感じながら過ごしている人がいます。

人間関係に疲れている人。
職場で理不尽さを感じている人。
家庭の中で我慢を重ねている人。
自分の性格や弱さを責め続けている人。
周りに合わせすぎて、自分が何を感じているのか分からなくなっている人。

そういう人たちは、決して怠けているわけでも、弱いわけでもありません。

むしろ、多くの場合、ずっと何かと戦ってきた人です。

生きづらさは「心」だけの問題ではありません

生きづらさというと、つい心の問題として考えがちです。

もちろん、考え方や価値観、人間関係は大切です。けれど、それだけでは不十分です。

なぜなら、心は体と切り離せないからです。

睡眠不足が続くと、些細な言葉にも傷つきやすくなります。
呼吸が浅くなると、体はずっと緊張状態になります。
栄養が不足すると、気分は不安定になりやすくなります。
筋肉がこわばると、心まで硬くなっていきます。

つまり、生きづらさを感じているとき、それは単に「メンタルが弱い」からではありません。

体が疲れている。
神経が休めていない。
眠れていない。
呼吸が浅い。
栄養が足りていない。
緊張が抜けない。

そういう体の状態が、心のつらさを増幅していることがあります。

深淵を見つめすぎると、呼吸が浅くなる

つらいことが続くと、人は視野が狭くなります。

「あの人が悪い」
「自分が悪い」
「もうどうにもならない」
「この先もずっと同じだ」

こうした思考に入り込むと、まさに深淵を覗き込んでいる状態になります。

そのとき、体では何が起きているでしょうか。

肩に力が入る。
奥歯を噛みしめる。
胸が詰まる。
お腹が固くなる。
呼吸が浅くなる。
夜になっても頭が止まらない。

この状態では、冷静に考えようとしても難しいのです。

だから、生きづらさを感じる人にまず伝えたいのは、「もっと前向きに考えましょう」ではありません。

まずは、体を安全な状態に戻しましょう。

怪物にならないために、からだを整える

理不尽なことと戦うことは、ときに必要です。

自分を守るために距離を取ることも必要です。嫌なものを嫌だと言うことも大切です。

でも、その戦い方を間違えると、心と体はどんどん消耗していきます。

怒りで戦い続けると、怒りに支配されます。
我慢で耐え続けると、感覚が麻痺します。
正しさだけで戦い続けると、他人にも自分にも厳しくなりすぎます。

だからこそ、戦う前に整える。
傷ついたら整える。
頑張ったら整える。

これは逃げではありません。

自分を壊さずに生きるための、現実的な知恵です。

からだ整えラボ的・生きづらさへの処方箋

まず、睡眠を削らないことです。

眠れていない脳は、危険を大きく見積もります。普段なら流せる言葉が刺さり、普段なら考えすぎないことを何度も反すうしてしまいます。

次に、呼吸を深くすることです。

特に大切なのは、吸うことよりも吐くことです。鼻から軽く吸って、口からゆっくり長く吐く。これだけでも体は少しずつ「今は安全だ」と感じ始めます。

そして、食事を整えることです。

甘いものやカフェインで一時的に気分を持ち上げても、その後に反動が来ることがあります。たんぱく質、鉄、ビタミン、ミネラルなど、心を支える材料を体に入れることはとても大切です。

さらに、体を動かすことです。

歩く。伸ばす。背中を動かす。肩甲骨を回す。股関節を動かす。

ストレスは頭の中だけでなく、体にも残ります。体を動かすことで、こわばった神経が少しずつほどけていきます。

戦う相手を間違えない

本当に戦うべき相手は、目の前の誰かではないことがあります。

自分を責め続ける癖。
いつも我慢してしまう習慣。
無理をしても休まない生活。
他人の評価を中心にした生き方。
疲れているのに「まだ大丈夫」と言い続けること。

外側の怪物と戦っているつもりで、実は自分の内側を傷つけ続けていることもあります。

だから、ときどき立ち止まって問い直す必要があります。

この戦い方で、自分は幸せに近づいているのか。
自分を守るつもりで、自分を壊していないか。
深淵を見つめすぎて、そこに飲み込まれていないか。

最後に:怪物と戦う前に、自分を取り戻す

今、生きづらさを感じている人へ。

あなたが弱いから苦しいのではありません。

長く戦ってきたから、疲れているのかもしれません。

だから、まずは自分を責めるより、体を休ませてください。

深く眠る。
ゆっくり吐く。
温かいものを食べる。
少し歩く。
朝の光を浴びる。
安心できる人と話す。

小さなことに見えるかもしれません。

でも、体が整うと、心の見え方は少しずつ変わります。

怪物と戦う前に、
自分自身が怪物にならないように。

深淵を覗き込んだときほど、
自分の足元に戻ってくること。

心を守るために、からだを整える。

それが、からだ整えラボからの提案です。

まとめ

生きづらさは、心だけで抱え込むものではありません。睡眠、呼吸、栄養、運動、休息。からだを整えることは、心を守るための土台になります。

深淵を見つめすぎたときほど、まず自分の体に戻ってくる。そこから、もう一度、自分らしい生き方を取り戻していきましょう。

投稿者プロフィール

院長:山口裕礼(やまぐちひろみち)
院長:山口裕礼(やまぐちひろみち)
からだ整えラボ
① 医学=呼吸器・アレルギー
② 生活=腸・温活・食・睡眠・肌
③ 幸福=働き方・環境・園芸
“病気を診るだけでなく、人をまるごと診たい”
——その思いを胸に、学びを続けています。
医学的根拠 × 生活習慣 × 心の豊かさ
三位一体の医療をめざしています。
資格:
<医学・医療>医学博士、日本呼吸器学会認定呼吸器専門医、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医、日本喘息学会認定喘息専門医、日本内科学会認定内科医、日本喘息学会認定吸入療法エキスパート
<予防医学・代替医療・環境>
機能的骨盤底筋エクササイズpfilAtes™認定 インストラクター国際資格← NEW✨
カラダ取説®マスター・ジェネラル
環境省 環境人材認定事業 日本環境管理協会認定環境管理士、漢方コーディネーター、内面美容医学財団公認ファスティングカウンセラー、日本セルフメンテナンス協会認定腸内環境管理士、腸内環境解析士、日本温活協会認定温活士、薬膳調整師、管理健康栄養インストラクター、食育健康アドバイザー、日本フェムテックマイスター協会公認フェムテックマイスター®上級、公認妊活マイスター®Basic、日本スキンケア協会認定スキンケアアドバイザー、メンタル士心理カウンセラー、アーユルヴェーダアドバイザー、快眠セラピスト、安眠インストラクター
<文化・生活>
日本園芸協会認定ローズ・コンシェルジュ、ローズソムリエ®(バラ資格)
<受賞歴>
第74回日本アレルギー学会学術大会「働き方改革推進奨励賞」受賞