つながる手に込められた思い
ドラマ「光る君へ」のラスト近く、まひろが「道長さま、お目にかかりとうございました」と語りかけ、道長がゆっくりと手を伸ばすシーンが描かれました。
オープニングと同じように、2人の手が再び伸ばされ、今度は昼間にその手を握り合うことが許されます。
この瞬間には、これまでの関係を超えた深い絆と、互いを求め合う心が象徴されていました。
「幻」を追い続ける思い
まひろが「光る君が死ぬ姿を書かなかったのは、幻がいつまでも続いてほしいと願ったゆえでございます」と語る場面は、私たちが現実の中で何かを失う恐怖や、永遠を願う気持ちを思い起こさせます。
道長が亡くなることを知りながらも、その現実を受け入れたくない──まひろの心には、別れの切なさと共に、失われるものへの執着が隠されています。
私たちも、家族や大切な人との別れに直面するとき、「幻」としてその存在が続くことを願う瞬間があります。
しかし、現実は無情に進んでいきます。その中で、心に残る思い出や言葉が、幻を「希望」として生かしてくれるのではないでしょうか。
命の価値を思い出す
劇中で語られた「晴明にあげた寿命10年」というエピソードが道長に記憶されていたことは、命の時間の重みを感じさせます。
たとえ短い時間であっても、その中で誰かのために何かを捧げたことは、永遠に消えることはありません。
日常生活でも、私たちは時間の価値を忘れがちです。
けれども、命には限りがあるからこそ、その一瞬一瞬が輝くのです。
家族や友人と過ごす時間、誰かのために尽くす瞬間を大切にすることで、時間はさらに意味深いものとなります。
さいごに
「幻が続いてほしい」という思いは、人が誰かを大切に思うからこそ生まれるものです。
そして、現実を受け入れる中でも、その人の存在は私たちの心の中で永遠に生き続けます。
病や別れに向き合うとき、悲しみや寂しさを感じることもあるでしょう。
しかし、つながり続けた手の温もりや、共有した時間の価値を思い出すことで、心の中に小さな希望が生まれます。
どうか今この瞬間、あなたの大切な人と過ごす時間を大切にしてください。
そして、その時間が心の中で「幻」ではなく、希望となるよう願っています。
人生の一瞬一瞬を、誰かとのつながりの中で輝かせていきましょう。
やまぐち呼吸器内科・皮膚科クリニック 山口裕礼