「お菓子はストレス発散になる? それともストレスの原因?」 ー 食事と病気の関係を考える
やまぐち呼吸器内科・皮膚科クリニックの山口裕礼です。
疲れたときやストレスを感じたときに、「甘いものを食べるとホッとする」という経験は、多くの人にあるのではないでしょうか?
今日は、食事とストレスの関係を科学的な視点から紐解き、患者さんにとって「より良い食の選択」について考えてみたいと思います。
1. お菓子を食べるとストレスが軽減する?
甘いものを食べると「幸せな気持ちになる」と感じるのは、実際に脳の神経伝達物質が関係しているからです。
糖質は脳内のセロトニンを増やす
糖質を摂ると、脳内で「セロトニン」というホルモンが分泌されます。
セロトニンは「幸せホルモン」とも呼ばれ、リラックス効果や気分の安定に関与しています。即効性のあるエネルギー補給
糖質はすぐにエネルギー源として使われるため、短時間で疲労回復の感覚が得られます。
そのため、疲れたときに甘いものを食べると、一時的に元気が出ると感じるのです。「ご褒美効果」による心理的な満足感
「頑張ったからスイーツを食べよう」と考えることで、脳が報酬を得たと感じ、快感が得られることも知られています。
このように、甘いものを食べることで一時的にストレスが和らぐ効果は確かにあるのです。
2. お菓子を食べると、逆にストレスが増える?
甘いものを食べた後、逆にイライラしたり、疲れやすくなったりすることはありませんか?
実は、糖質を多く摂りすぎると、次のような影響を引き起こします。
❗ 血糖値の急上昇と急降下(血糖値スパイク)
お菓子に含まれる「白砂糖」や「精製された炭水化物」は、急激に血糖値を上昇させます。
すると、それを抑えるためにインスリンが大量に分泌され、血糖値が急降下します。
この「血糖値の乱高下」によって、
✅ 急な眠気や疲労感
✅ イライラや不安感の増加
✅ 集中力の低下
といった症状が引き起こされ、結果的にストレスを感じやすくなります。
❗ 腸内環境の悪化
腸には「腸内フローラ(腸内細菌)」が存在し、健康に深く関わっています。
砂糖の過剰摂取は、腸内の悪玉菌を増やし、腸の炎症を引き起こす原因になります。
すると、
✅ 便秘や下痢などの消化不良
✅ 免疫力の低下
✅ セロトニン(幸せホルモン)の減少
につながり、ストレスを増幅させてしまう可能性があるのです。
❗ 慢性的な疲労とホルモンバランスの乱れ
甘いものを食べると一瞬元気になりますが、繰り返し摂取すると副腎(ストレスホルモンを調整する臓器)に負担がかかり、
✅ 慢性的な疲れ
✅ 朝起きられない
✅ 頭がボーッとする
といった症状を引き起こし、結果的に「ストレスを感じやすい体」になってしまいます。
3. 「ストレスを軽減する食事」とは?
では、お菓子をやめるべきかというと、そういうわけではありません。
大切なのは、バランスよく食べることです。
セロトニンを増やす食品を選ぶ
セロトニンは「トリプトファン」というアミノ酸から作られます。
これを含む食品を食べることで、甘いものに頼らずストレスを軽減できます。
✔ 大豆製品(納豆、豆腐、味噌)
✔ ナッツ類(アーモンド、くるみ、カシューナッツ)
✔ バナナ
✔ 鶏肉、卵
✔ 乳製品(ヨーグルト、チーズ)
血糖値を安定させる食事を心がける
血糖値の乱高下を防ぐことで、ストレスの原因を減らすことができます。
✔ 白米よりも玄米や雑穀米
✔ パンなら全粒粉やライ麦パン
✔ 野菜やタンパク質と一緒に糖質を摂る
甘いものを食べるなら「質」と「タイミング」を意識する
〇 果物やはちみつを活用する → 自然な甘さなら血糖値の急上昇を防ぎやすい
〇 さつまいもやナッツをおやつにする → 食物繊維が豊富で満足感が続く
〇 お菓子は食後に少量楽しむ → 食後なら血糖値の急上昇を防げる
4. まとめ ― お菓子と上手に付き合う方法
「お菓子がやめられない…」と思っている方は、まず 「甘いものを減らす」よりも「良い食事を増やす」こと から始めてみてください。
少しずつ食習慣を整えることで、心も体も軽くなるのを実感できるはずです。
当院では、患者さん一人ひとりに合った食事のアドバイスも行っていますので、気になることがあればお気軽にご相談ください。
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