「食事を見直せば病気は良くなる?」― 本当に必要な視点とは

やまぐち呼吸器内科・皮膚科クリニックの山口裕礼です。

「食事を変えれば病気は良くなるのに、なかなか実行できない」


これは、医療の現場でよく聞かれる言葉です。

私も日々の診療の中で、食事の改善が症状の緩和や病気の予防につながると説明する機会が多くあります。

しかし、実際に行動に移すことができる人は一握りです。

一方で、ある人はこう言いました。

「そもそも食事を見直せる人は病気にならないのでは?」

これは、一見シンプルですが、とても深い洞察を含んだ言葉です。


今日はこの言葉の意味を掘り下げながら、「病気と食事」「健康と意識」の関係について考えてみたいと思います。

1. 「食事を見直せば病気は良くなる」―― これは事実か?

まず、食事が健康に与える影響について、科学的な視点から整理してみましょう。

病気と食事の関係(エビデンス)
生活習慣病(糖尿病・高血圧・脂質異常症)食事の改善が最も重要
アレルギー疾患(喘息・アトピー・花粉症)腸内環境の改善が鍵
メンタルヘルス(うつ・不安障害)血糖値の安定・腸内フローラが影響

例えば、糖尿病の人が砂糖を控えたり、塩分を減らすことで高血圧が改善することは、医学的に証明されています。

また、腸内環境を整えることでアレルギー症状が軽減するケースも多く、食事の改善は病気の予防や治療に直結するのです。

2. 「食事を見直せば良くなるのに、できない」のはなぜ?

では、なぜ「食事を変えれば良くなる」と分かっていても、多くの人が実行できないのでしょうか?

① 食事の変化は「即効性」がない
薬のように「飲んだらすぐ効く」わけではなく、結果が出るまでに時間がかかるため、継続が難しくなります。

② 習慣は強い「無意識の力」に支配されている
人間の行動の約95%は無意識の習慣に基づいていると言われています。
食事もその一つで、長年の食習慣を変えるには強い意識改革が必要になります。

③ 環境の影響を強く受ける
例えば、
✅ 家族が好きな食事に合わせてしまう
✅ 職場のランチが決まっている
✅ 交友関係の中で「食事を楽しむ文化」がある

このように、個人の意志だけではコントロールしにくい環境要因があるのも事実です。

3. 「そもそもできる人は病気にならない」―― この言葉の本質

「食事を見直せる人は、そもそも病気にならないのでは?」

この言葉の真意を考えてみましょう。

「できる人」とは?
ここでいう「できる人」とは、食事や生活習慣に対して高い意識を持ち、自分で選択・行動できる人を指します。

✅ 健康に対する意識が高く、日々の食事を考える習慣がある
✅ ストレス管理や運動習慣など、総合的に健康を考えている
✅ 情報を得て、科学的に正しい食の選択ができる

こうした人は、結果的に健康を維持しやすく、病気になりにくいと言えます。


逆に、「できない人」は病気になりやすいのか?

ここで重要なのは、「できない人」が病気になるのは本人の努力不足ではないということです。

病気には遺伝的要因や環境要因も大きく関わっています。

また、現代社会は高カロリー・高糖質・加工食品が溢れ、ストレスも多い環境です。


そのため、食生活を意識していないと、自然と病気になりやすい環境にいるということなのです。

4. 「食事を変えられる人」になるには?

では、どうすれば「食事を見直せる人」になれるのでしょうか?

「完璧を求めず、できることから始める」
いきなり「糖質ゼロ」「無添加生活」などの極端な食事を目指すと、続きません。
まずは、できることを一つずつ始めることが大切です。

✔ 白米を玄米や雑穀米にしてみる
✔ 清涼飲料水をお茶や水に変える
✔ 添加物の少ない食材を選ぶ

「食事を変えること=自分の価値観を変えること」
食事は単なる栄養補給ではなく、「生き方」や「価値観」に関わるものです。
まずは、「なぜ健康でいたいのか?」を自分の中で考えてみることが大切です。

「環境を変える」
人は環境に大きく影響されるため、健康的な食習慣をサポートしてくれる環境を作ることが大切です。

✔ 家にジャンクフードを置かない
✔ 家族と一緒に健康的な食事を楽しむ
✔ 健康を意識した友人と情報を共有する

5. まとめ ― 病気を予防する「食事と意識」

食事を変えることで、病気の予防や治療につながるのは科学的に事実
しかし、食習慣を変えるのは簡単ではなく、環境や習慣の影響が大きい
「できる人は病気にならない」という考え方には一理あるが、それを実践するには意識の改革が必要

結局のところ、健康は意識と行動の積み重ねです。

「病気にならない人」になるためには、少しずつ意識を変え、実践していくことが大切なのです。

当院では、患者さんが「できること」から始められるよう、具体的なアドバイスをしています。
健康な食習慣を身につけ、病気を予防し、より良い人生を送るために、一緒に考えていきましょう。

やまぐち呼吸器内科・皮膚科クリニック 山口裕礼

日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本アレルギー学会認定アレルギー専門医
日本喘息学会認定喘息専門医
日本内科学会認定内科医
日本喘息学会認定吸入療法エキスパート
内面美容医学財団公認ファスティングカウンセラー
日本セルフメンテナンス協会認定腸内環境管理士

日本園芸協会認定ローズ・コンシェルジュ

投稿者プロフィール

院長:山口裕礼(やまぐちひろみち)
院長:山口裕礼(やまぐちひろみち)
2017年1月、希望が丘(神奈川県横浜市)にて、やまぐち呼吸器内科・皮膚科クリニックを開院しました。