クリニックだより

新型コロナウイルス、子ども・外国語話者・視覚/聴覚障害等のサポート・不安のケア

新型コロナウイルス 情報が届きにくい方のサポート・不安のケア

1. 新型コロナウイルスの基本的な特徴

はじめに、新型コロナウイルスの特徴を簡単にまとめます。

感染様式は、ウイルスを含んだ咳・くしゃみ・つばなど飛沫(とびちったしぶき)に含まれるウイルスを吸い込むことによる「飛沫感染」と、ウイルスに触れた手指で口・目・鼻を触ることによる「接触感染」の2つです。感染源への接触から症状が現れるまでの潜伏期間は14日と言われています。

新型コロナウイルス感染症は、風邪のような症状から始まります。発熱、咳に加え、倦怠感(けんたいかん)などが比較的多く見られます。筋肉痛、呼吸困難などがみられる場合もあります。また、 頭痛、喀痰(かくたん)、下痢などを伴う例も認められます。症状が現れない人もいます。

新型コロナウイルス感染症は風邪の症状によく似ていますが、症状が続く期間が風邪と比べて長いという特徴があるようです。特に重症化する事例では、発症から1週間前後で呼吸困難などの肺炎の症状が強くなってくることが分かってきました。

2. 一人ひとりにできる感染対策

ここでは、感染から可能な限り身を守るために、一人ひとりが日常で行える対策を紹介します。

1)人混みを避ける

人が密集する場所へは、時間や経路の調整などで可能な限り避けてください。また、不要な病院受診も可能な限り避けてください。通信販売の利用、病院受診が必要な際はなるべく混雑しない時間帯を選ぶ、出かけるときに自家用車やタクシーを利用するなどの工夫を、可能な限り取り入れてみてください。

2)手洗い、アルコールによる手指の消毒

特にトイレに行った後、何かを食べる前、鼻をかんだ後、咳をしたり、くしゃみをした後、怪我をしたとき、動物をさわったあとは、石けんと水で少なくとも20秒間は手をよく洗い、手を乾かしてください。

石鹸と水が近くにない場合(すぐに手に入らない場合)は、手指用の市販アルコールジェルをすりこみましょう。

3)咳エチケット

咳やくしゃみをする際は、手を汚さないために、肘(ひじ)の内側や袖(そで)でおおうか、洋服の中(首のところから)にしましょう。また、人のいない方を向いてするようにしましょう。咳やくしゃみのある方は、マスクをすき間なく着用したり、ティッシュやハンカチを持ち歩くようにしてください。



4)できるだけ目、鼻、口にふれない

目、鼻、口にふれる前と後は、2)で紹介した方法で手洗いをしてください。

5)頻繁にさわるものを定期的に消毒する

ドアノブなど、頻繁に触れる物は、手指を顔にちかづけやすい利き手を使わず、反対側の手でさわるようにしましょう。

また、オフィスや店舗、施設など、多数の人が利用する施設では、消毒用アルコールなどを用いてドアノブや照明のスイッチ、電話などを定期的に消毒するようにしてください。


6)こまめに換気をする

3. 自分や家族に感染の疑いがある場合はどうする?

ここでは、熱や倦怠感(けんたいかん)など、新型コロナウイルス感染・発症時と同様の症状が自分や家族にあらわれた際の考え方と対応方法を紹介します。

熱があるからといって、必ずしも新型コロナウイルス感染とは限りません。現在、新型コロナウイルス感染症が疑われた場合、各自治体の相談窓口に電話相談した後に医療機関の「帰国者・接触者外来」を受診することになります。

まず、発熱など風邪のような症状があったら毎日熱をはかって記録しておいてください。その上で、以下の基準・画像を参考に帰国者・接触者相談センターへご相談ください。

・風邪の症状や37.5度以上の発熱がある方

→症状が4日以上続いたら相談センターへご連絡ください。

・高齢の方、糖尿病、心不全、呼吸器疾患の基礎疾患がある方や透析を受けている方、免疫抑制剤や抗がん剤等を用いている方

→37.5度以上の発熱が2日以上続いたら相談センターへご連絡ください。

・強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある方

すぐに相談センターへご連絡ください。


出典)厚生労働省「新型コロナウイルス感染症についての相談・受診の目安」

体調不良の方は、医療機関にかかるとき以外は家で過ごし、回復を最優先させてください。学校や仕事に行かず、共空間への外出や公共機関の利用も控え、医師の指示に従って安静にお過ごしください。

4. 特に感染に気をつけたい方はどんな方?

以下では、もともとの疾患があるなどで、感染しやすかったり、症状が重症化しやすい方はどのような方なのか、そうした方々が気をつけるべきことについてご紹介します。

1)高齢の方、基礎疾患のある方

高齢の方や、糖尿病、心不全、腎障害がある方、透析をしている方、生物学的製剤・抗がん剤・免疫抑制剤を投与している方は、新型コロナウイルスに感染した際に、重症化しやすい可能性があることがわかっています。

予防方法や発症時の対応はこれまでにご紹介したことと同様ですが、上記に該当する方は、特にご注意いただき、可能な限り外出や人混みを避け、手洗い等を徹底してください。

2)妊娠している方、母乳育児をしている方

新型コロナウイルスは、インフルエンザ等と異なり、妊婦であるからといって特に重症化リスクが高いわけではないようです。また、胎児への影響も現在では確認されていません。

一方で、新型コロナウイルスに限らず、一般的に妊婦の方は横隔膜が持ち上がっているため肺炎にかかりやすく、重症化しやすいのも事実です。

妊娠しているからといって特別な対応をする必要はありませんが、これまでにご紹介した感染予防を、より徹底して行っていただければと思います。

母乳でお子さんに授乳中の方は、新型コロナウイルス感染が確定した場合、発症から解熱後3日までは授乳を避ける必要があります。回復後もウイルス陽性が続きますので、授乳者の顔と赤ちゃんの顔が近くなることは避け、ミルクを他の人があげるなど、感染予防を優先してください。

授乳再開タイミングについては、受診した医師に確認をしてください。

5. 子どもの心と体を守るためにできること

■子どものための感染予防策

現在のところ、乳児~小児の感染者は少なく、重症化しにくいと言われていますが、報告例も少なくわかっていないことも多いので、大人と同様にこれまでご紹介した予防策を積極的に行っていきましょう。

乳幼児期のお子さんは、手を使って様々なものを触ったり遊んだりして発達していく時期です。そのため、手を使って鼻を拭いたり、目をこすったりし、その手でおもちゃを扱ったり、他の人に触れたりする可能性が高く、マスクの着用も困難であるかもしれません。

そうした、お子さんの行動に合わせた予防策としては、1)外出時のこまめな手洗いや手指のアルコール消毒、2)テーブルやおもちゃ、ドアの取っ手などの洗浄・アルコール消毒、3)保護者が接するときに可能な範囲でこまめな手洗いを心がける、4)人混みを避ける、5)タオルなどを他の子と共有しない、などが挙げられます。

ご自身が感染予防策を行い、お子さんへの感染を防ぐこともとても大切です。逆に、小児での無症状の感染者の報告もありますので、基礎疾患がある方や高齢者の方など重症化しやすい方にお子さんが接触するのを控えてください。遊びに行く約束は延期にしたり、電話やタブレットの画面でお話をしたりと、感染予防を優先しながらのコミュニケーションを工夫してみてください。

その他、子どもの感染時の症状、受診の目安、乳児期の母乳などについては、以下の小児科学会のサイトをご覧ください。

参考)公益社団法人 日本小児科学会 新型コロナウイルス感染症に関するQ&A(2020年2月12日現在)について

また、呼吸器疾患(喘息のあるお子さん、未熟児出生や何らかの呼吸器疾患で呼吸器管理をしているお子さんなど)、心疾患、免疫不全状態(先天性免疫不全のお子さん、ステロイドや免疫抑制剤、抗がん剤などの治療を受けているお子さん)では、他の感染症と同様、悪化のリスクがあります。

活気がない、ぐったりしている、呼吸が苦しそう(呼吸がはやい、胸壁を大きく動かして一生懸命呼吸している様子がある)、食事や水分がとれない、発熱が数日つづくなどあれば、医療機関を受診してください。

疾患によってもリスクが異なりますので、基本的には、普段の受診の目安に従って受診するのがよいでしょう。主治医の先生に、どのような場合に受診が必要であるか、確認をしておきましょう。

■子どもの心へのまなざし(新型コロナウイルスについて子どもと話すときに)

大人たちの会話を聞いたり、ネットやテレビのニュースなど目にする中で、子どもたちも、子どもたちの視点・理解で、今回の新型コロナウイルスの情報を受け取っています。

新型コロナウイルス感染対策についての子どもへの伝え方は以下を参考にしてください

参考)藤田医科大学感染症科 「コロナウイルスってなんだろう」

子どもたちが遊びの中で、今回の感染発生などを表現した時は、まずは無理に止めずに見守りましょう。もし、よくない結果になりそうになったら、良い形で遊びが終えられるようにサポートしてください。

家族に感染した方がいて対応する必要がある時には、子どもがわかるたとえを使いながら丁寧に以下のように伝えてください。

1)○○(家族の誰か)は熱があること(必要であればたとえを用いながら)。そのためにお休みする必要があること。

2)△△(お子さんの名前など)にうつらないように、別々のお部屋で過ごすこと。

3)見通しがわかっていたら見通しを伝える(**日くらいだよ。**まで様子を見てまた伝えるね。それまでに心配なことがあったら言ってね。)

4)ほとんどの人は回復すること。

5)「もし気になったり、心配なことがあったらいつでもいってね」と伝えるなど、子どもの疑問や不安を受け止める。


感染して別々の部屋にいる家族とは、タブレットやスマートフォンなどでのオンライン通話などで、家の中でコミュニケーションをとれるようにするなど、お子さんが安心する方法を試してみるなどお子さんが安心できる方法を工夫してみてください。

学校や保育園のイベントが変更になったときなどは、その事実について丁寧に伝えて、その時のお子さんの気持ちを受け止めてください(嫌だったね、悲しかったね、など)。

感染により学校などの行事が取りやめになることもあるかと思います。このようなことは誰かが悪いわけではありません。是非、ご自身のお子さんの気持ちを受け止めた上で、感染したお子さんを労わるようなコミュニケーションをご自宅で取るなど「誰かを悪者にするのではなく、お互いを労わる言葉がけ」を心がけていただけたらと思います。

6. 情報が多すぎる、どうしたらいいかわからないなど、不安な気持ちとのつきあいかた

新型コロナウイルスに関しての情報を適切に得ることはとても大切です。また、様々な情報がある中で、不安な気持ちになることも、とても自然なことです。

ただ、「不安になりずっとSNSやテレビをみている」、「新型コロナウイルスのことばかり考えている」というような状態が続いている方は、SNSやテレビから離れる時間をつくってみることをおすすめします。

そして、自分の好きなことをする、漫画や本を読む、音楽をきくなど、違うことをする時間をつくってみてください。

ゆっくり深呼吸したり、身体を伸ばしてみたり、お子さんの場合はゆっくり背中をさすってあげたりするなど、身体をいたわることでも心が楽になりやすくなります。自分にとっての安心しやすい方法を試してみてください。

本記事には、感染予防や、発熱時の受診基準など、一人ひとりが日常生活の中で知っておくべきこと・実践できることをまとめています。「情報が多すぎてどうしたらいいかわからない」という方には、この記事をご紹介いただければ幸いです。

不安な気持ちを抱いていてもおかしくはない状況ですが、できる限りでお互い大切にし、いたわりあうコミュニケーションを心がけていただければ幸いです。

「手を洗わないと感染しちゃうよ」ではなく、「手をきれいにして自分の健康を守ろうね」と肯定的な伝え方をする
誰もが感染する可能性があるという前提のもと、お互いの心身の健康を気づかいあう
感染した人を責めるのではなく、いたわり、回復に専念できる伝え方をする。
こころのケアを担当される方々は、もし可能なら、ペアまたはチームで活動にあたり、お互いをケアし合える体制でケアにあたっていただければと思います。

出典 新型コロナウイルス 情報が届きにくい方のサポート・不安のケア

投稿者プロフィール

院長:山口裕礼(やまぐちひろみち)
院長:山口裕礼(やまぐちひろみち)
2017年1月、希望が丘(神奈川県横浜市)にて、やまぐち呼吸器内科・皮膚科クリニックを開院しました。