クリニックだより

ちょうど一年前、正月のプライベート時間は夢のよう!

江戸時代へタイムスリップした幸せな一日

悪党を倒すスーパーマン、怨霊の祟りの凄まじさ、ロマンとスリル、錦絵のような様式美、我が子との別れ、人殺し、子殺し、仇討ち、中年と少女の不倫、コメディ、祭り、心中、宙を飛ぶ、サスペンスなど様々なジャンルがあります。

とてもテレビでは放送できない内容でも平気で上演しております。

斬新な色彩感覚や粋な言葉の遊び、そして舞台装置や道具など、現代人では及びもつかない豊かな感性を駆使して、世界の類のない豪華で大胆、そして魅力あふれる芸能は歌舞伎です。

私の歌舞伎鑑賞の、ある日の一日をご紹介させていただきます。

歌舞伎に少しでも興味が持っていただければと思います。

2020年壽 初春大歌舞伎、夜の部

場所は歌舞伎座。最寄り駅は東銀座だが、いつものように車でいく。

歌舞伎座があるGINZA KABUKIZAパーキングは停めやすく好んで利用する。

思えば2019年12月の新作歌舞伎「風の谷のナウシカ」が一等席を手に入れていたにもかかわらず日程の関係で行けなかったことが悔やまれる。

15時歌舞伎座についたらまずは地下一階の木挽町広場へ直行する。

ここには様々なお土産があり、見ているだけで心躍る。

今日は特に何も購入しなかった。

15時30分いつものように歌舞伎座横にある歌舞伎稲荷神社に日頃の感謝をお参りする。

そのあとはイヤホンガイドを借りる。

これは必須である。通常700円プラス保証金1000円がかかるが、1000円は返却時にもどる。

歌舞伎座の前は人でごった返している。

昼の部が終わった後で歌舞伎から出てくる人と、今か今かと待ちわびる人だ。

道路には大型の観光バスや主人の送り向かいの高級車が列をなす。

16時いよいよ開場だ。

中に入れば一瞬のうちに江戸時代にタイムスリップできる。

新年を迎え、劇場前には門松が飾られ、大間(1階ロビー)のお供えやお正月飾りなどによって、歌舞伎座は普段にもまして晴れやかな雰囲気に包まれている。

余裕があれば筋書きを購入するのもよい。

さて、いつもの3階B席にエスカレーターで向かう。

歌舞伎は1等席19,000円、2等席15,000円、3階A席6,000円、3階B席4,000円、1階桟敷席21,000円だ。

一幕だけ見る一幕見席は歌舞伎座4階にあるが、せっかくなので3幕すべて観たい。

一番のおすすめはどこかと聞かれたら3階A席とお答えする。

抜群のコストパフォーマンスだ。

3階は数多く足を運ぶ観客で人気であり、すぐに売り切れてしまう。

座席に着き、周りを見渡せば海外の観客も多いことがわかるが、いつもの風景だ。

今や歌舞伎は、海外でもとても人気のエンターテイメントだ。

歌舞伎特有の花道も十分見える。

花道がある意味合いは立体感だ。

普通の絵本が飛び出す絵本になるようなイメージである。

16時30分いよいよ開演。

第一部、義経腰越状、五斗三番叟。

役者は白鸚、芝翫、猿之助と豪華メンバーだ。

イヤホンガイドという強い相棒を片耳につける。

絶妙のタイミングの歌舞伎解説をしてくれる。

イメージはまるで隣の席に専門家がいて、自分だけのために、横でポソポソと囁いてくれているかのよう。

歌舞伎は、言っていることがわからないことが多いが、ガイドがあれば問題ない。

そのうち、心で感じることができる。

松本幸四郎改め二代目松本白鸚が熟練した技で魅せる。

「高麗屋!」「澤瀉屋!」――。

歌舞伎を見に行くと、上演中に客席のどこからともなく大きな声が舞台に飛んでくる。

歌舞伎の場合は掛け声が舞台を盛り上げる。

白鸚はコミカルな演技で表し観客の笑いを誘う。

正月の演目らしい趣向を取り入れた立ち廻りで魅せた。

幕間 15分

第二部、連獅子。

猿之助が親獅子を、市川團子が仔獅子を勤める。

いわゆる歌舞伎のイメージの隈取に勇壮な獅子の豪快な毛振り。

しなやかな身のこなし。

きらびやかな衣装に、派手な化粧。立ち居振る舞いに芸術の極み、動く絵画のような様式美である。

あまりの美しさに涙がでる。

クライマックスで猿之助と團子が並んで見得!

切り取られた瞬間の美に会場は大きな拍手で包まれた。

自分にも力がみなぎってきているのがわかる。

幕間 35分。

この時間を利用して食事をする。

弁当を食べても良いし、歌舞伎座内のレストランを利用しても良い。

歌舞伎は約4時間あるが、三部作で成り立っている。

分かりやすく言うと人情ドラマ、踊り、戦国時代という感じで飽きさせない。

さあ、歌舞伎でも行ってみようか。

演目で選ぶか役者で選ぶか。

華やかさや豪快さ、歌舞伎独特の演技が見たいのなら、「歌舞伎十八番」の助六由縁江戸桜、勧進帳、暫がおすすめ。

名セリフと美しい場面なら白浪五人男、怖い話なら東海道四谷怪談などの「世話物」がある。

歌舞伎三大名作の義経千本桜、菅原伝授手習鑑、仮名手本忠臣蔵はどれも見応えのある作品だ。

美しい舞と踊りを楽しむなら、連獅子、京鹿子娘道成寺などの「舞踊劇」。

斬新さと派手な演出好きなら、ワンピース、新版オグリなどを生み出した「スーパー歌舞伎」がピッタリ。

人気歌舞伎役者は、市川海老蔵、市川猿之助、片岡愛之助、中村勘九郎、松本幸四郎、中村勘三郎、尾上菊五郎、坂東玉三郎、中村吉右衛門、松本白鸚、尾上松也、中村芝翫、香川照之、片岡仁左衛門、中村七之助、中村獅童。

最近はテレビのドラマ、バラエティ、CMなどで歌舞伎役者が出演していることがとても多い。

生の有名な役者が、間近で感じられるのが歌舞伎の魅力だ。

2020年5月より、市川海老蔵が十三代目市川團十郎白猿襲名披露を、長男・堀越勸玄が八代目市川新之助初舞台を行う。

今から楽しみだ。(延期になりました・・・)

「生きていてよかった

この言葉は歌舞伎が好きな人が口にする。