吸入ステロイドの登場と喘息死亡率の変化

こんにちは。やまぐち呼吸器内科・皮膚科クリニックの山口裕礼です。


今回は、喘息治療において画期的な存在である吸入ステロイドが登場したことで、どのように喘息患者さんの健康や死亡率に影響を与えてきたのかをお話しします。

歴史的にみた喘息と死亡率

Danger

かつては、喘息発作による死亡が決して珍しくありませんでした。

激しい発作による呼吸困難が長引くと、救急対応が遅れる場合などに命の危険が伴うこともあったのです。


しかし、医療技術の進歩とともに治療薬も改良され、特に吸入ステロイドが普及することで、重症化を防ぎ、死亡率を大幅に下げることが可能となりました。

吸入ステロイドがもたらした恩恵

1. 気道の炎症を直接抑える

吸入ステロイドは気道の粘膜に直接作用し、炎症を抑える薬です。

Success

気管支拡張剤と異なり、「炎症そのもの」を抑えられるため、根本的なコントロールが期待できます。

2. 全身への副作用が少ない

ステロイドと聞くと「副作用が心配」という声もありますが、吸入ステロイドはごく微量を吸入するため、全身への影響は非常に少なく、安全に使用しやすい点が大きなメリットです。

3. 発作の頻度や重症度の大幅な減少

過去には、発作のたびに病院受診や入院が必要となり、QOL(生活の質)が大きく低下する患者さんが多くいました。

しかし、吸入ステロイドの適切な使用で、発作の頻度や重症度を抑えられるようになり、喘息があっても日常生活をほぼ普通に送れる方が増えています。

4. 死亡率の劇的な低下

吸入ステロイドの普及は、喘息の死亡率を大幅に下げる大きな要因となりました。

炎症をコントロールできることで重篤な発作を予防し、命にかかわる事態を回避しやすくなっています。

それでも必要に応じて全身ステロイドが活躍

吸入ステロイドで十分にコントロールが難しい場合や、重度の発作時には全身ステロイドが必要になります。

全身ステロイドの力

全身ステロイドは吸入ステロイドよりも体への影響が大きい分、強力に炎症を抑える効果を発揮します。

医師の判断のもと、必要最小限の期間で用いることが重要です。

日常から気をつけたいこと

自分ができること

  • 甘いものや精製食品を避ける
    糖分の過剰摂取や精製食品の多用は腸内細菌バランスを乱し、免疫システムにも影響を与えます。腸内環境を整えるためにも、普段の食事から見直しましょう。
  • 発酵食品や食物繊維を積極的に摂る
    ヨーグルト、納豆、味噌などの発酵食品、そして野菜や果物、海藻類に含まれる食物繊維は腸内細菌に良い影響をもたらします。
  • 医師の指導を守って治療を続ける
    吸入ステロイドは処方通りに使用することで効果を最大限に得られます。自己判断で中断したり、減量したりすると発作が悪化する恐れがあるため注意が必要です。

Q&A

吸入ステロイドを長期で使って副作用はありませんか?

長期使用しても、全身への吸収が少ないため副作用は最小限に抑えられます。口腔内のカンジダ症などを防ぐため、吸入後はうがいをするのがおすすめです。

吸入ステロイドだけでコントロールできなかった場合、どうなるのでしょう?

必要に応じて他の薬剤(吸入気管支拡張剤、生物学的製剤)を併用したり、重症の場合は全身ステロイドを使用することがあります。医師と相談しながら最適な治療方針を決めていきましょう。

吸入ステロイドを続けているのに発作が増えた気がします。どうすればよいですか?

季節や環境の変化、ストレスなどで喘息コントロールが乱れることがあります。吸入方法や回数を確認し、必要に応じて医師に再度相談してください。自己判断で薬を止めるのは危険です。

Information

歴史的に見ても、吸入ステロイドの登場によって喘息治療は大きく進歩し、多くの患者さんが命の危険から解放されました。

当院でも、患者さん一人ひとりの症状と生活状況に合わせた治療を行い、吸入ステロイドを中心としたコントロールを目指します。

気になることや不安なことがあれば、遠慮なくやまぐち呼吸器内科・皮膚科クリニックまでご相談ください。

やまぐち呼吸器内科・皮膚科クリニック
院長 山口 裕礼

投稿者プロフィール

院長:山口裕礼(やまぐちひろみち)
院長:山口裕礼(やまぐちひろみち)
2017年1月、希望が丘(神奈川県横浜市)にて、やまぐち呼吸器内科・皮膚科クリニックを開院しました。