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妊娠を考えている喘息で通院中の方へ

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妊娠前の喘息管理について:安心して妊娠を迎えるために

妊娠を考えている方にとって、喘息治療と妊娠の両立について疑問や不安を抱くのは当然のことです。

特に、「今の薬を使い続けていて妊娠しても大丈夫なのか」という点は多くの患者さんが最初に気にされるポイントです。

この記事では、妊娠前に知っておきたい喘息治療の基本情報や、安全な薬の使用について詳しく解説します。

妊娠前に喘息の管理が大切な理由

喘息を適切に管理することは、妊娠を安全に進めるための基本です。

喘息が悪化すると、妊娠そのものに影響を及ぼす可能性があります。

  • 酸素不足のリスク:妊娠中の酸素供給は胎児の成長に不可欠です。喘息がコントロールされていないと、胎児が十分な酸素を受け取れなくなる可能性があります。
  • 妊娠経過への影響:コントロール不良の喘息は、妊娠高血圧症候群や早産のリスクを高める可能性があると言われています。

妊娠前の薬の使用について

最も心配される「薬の安全性」についてですが、結論から言うと、ほとんどの喘息治療薬は妊娠中も安全に使用できます

以下は、妊娠前から使用される主な薬の安全性についての情報です。

  • 吸入ステロイド(ICS: Inhaled Corticosteroids)

    安全性:吸入ステロイドは妊娠中でも使用可能で、喘息コントロールに最も重要な薬です。特にブデソニドは妊娠中の使用が広く推奨されています。

  • 気管支拡張薬(β2刺激薬)

    安全性:短時間作用型(SABA)および長時間作用型(LABA)の気管支拡張薬は、発作時や予防的に使用可能です。特に必要な時に短時間作用型を使うのは問題ありません。

  • 抗ロイコトリエン薬

    安全性:妊娠中も使用できる薬とされています。

  • 吸入薬以外の治療薬
    例:経口ステロイド、テオフィリン
    安全性:発作時の経口ステロイドは短期間の使用では胎児へのリスクが低いとされています。ただし、長期間の使用は慎重に行う必要があります。テオフィリンは血中濃度の管理が必要です。

妊娠前の準備としてのポイント

  • 医師に相談を:妊娠を考え始めたら、まずは通院中の医師に相談しましょう。現在の薬や治療計画が妊娠に適しているか確認することが重要です。
  • 喘息の状態を安定させる:妊娠を安全に進めるためには、喘息をコントロール下に置くことが不可欠です。無理に薬をやめるのではなく、適切な治療を続けることが胎児にも母体にも良い影響を与えます。
  • 禁煙・生活環境の整備:喘息を悪化させるタバコの煙やダニ、ペットの毛などを避ける生活環境を整えましょう。

よくある質問

Q1. 薬をやめても良い状態にしてから妊娠するべきですか?
→ 必ずしも薬をやめる必要はありません。

薬をやめることで喘息が悪化するリスクの方が高い場合があります。

妊娠中も安全に使用できる薬は多いので、自己判断せずに医師と相談してください。

Q2. 妊娠のために吸入ステロイドを減量した方が良いですか?
→ 減量は必要ありません。

むしろ、喘息が安定していることが最優先です。

ステロイド吸入は妊娠中も安全性が高い治療法のひとつです。

妊娠前に喘息をしっかり管理しておくことで、安全に妊娠を迎える準備が整います。

今使っている薬が妊娠中も適しているかどうか、どんな不安があるかを遠慮なく医師に相談してください。

あなたの健康と赤ちゃんの健康を守るために、私たちも全力でサポートします。

山口裕礼
やまぐち呼吸器内科・皮膚科クリニック

投稿者プロフィール

院長:山口裕礼(やまぐちひろみち)
院長:山口裕礼(やまぐちひろみち)
2017年1月、希望が丘(神奈川県横浜市)にて、やまぐち呼吸器内科・皮膚科クリニックを開院しました。