ドラマにも登場
「温泉で喘息がよくなった」ってホント?~科学的に解説します
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こんにちは
やまぐち呼吸器内科・皮膚科クリニックの山口裕礼です
2025年春のNHKドラマ10「しあわせは食べて寝て待て」第6話
こんな印象的なセリフが登場しました
「温泉に行ったら、喘息がよくなった気がして…」
体に合う土地への移住や、自然の力で体調が整うことが描かれていましたね
とても素敵な場面でしたが、医師としての立場から科学的な視点で整理しておきたいと思います
温泉で喘息がよくなる
その科学的根拠とは?
「温泉に入ったら咳が出にくくなった」「息がしやすかった」
…こういった声は、実際の患者さんからもよく聞きます
でもこれは気のせいではありません。
ちゃんと医学的に説明できる理由があります
① 空気がきれいで湿度が高い
温泉地は山あいや森林地帯に多く、PM2.5や花粉、排気ガスといった喘息を悪化させる物質が少ない傾向にあります
さらに、湯気や地形の影響で空気が湿潤になっており、気道の乾燥が軽減されるのです
→ 気道が乾燥しにくい環境=咳・ヒューヒュー音の軽減に役立ちます
② 副交感神経が優位に
温泉にゆっくり浸かることで、緊張がほぐれ、自律神経のバランスが整いやすくなります。
特に喘息は「ストレス」や「緊張」によって悪化するため、リラックスは治療の一部ともいえるのです
→ 精神的ストレスが軽減=気道の過敏性も低下
③ 温熱効果で血流UP
体があたたまることで、血流が促進され、代謝が上がります。
このことが、慢性的な炎症を緩和させる一助となる可能性があるのです
でも…「全員に効く」わけではありません
ここがとても大切なポイントです
ドラマのように「温泉で体調が整った」人も確かにいますが、
それは「その人にとって、その場所がたまたま合っていた」ということ。
次のようなケースでは、かえって悪化する可能性もあります
温泉地が標高が高すぎて、空気が薄い
温泉の硫黄成分が気道に刺激になる
移動の疲れで体調が不安定に
温泉旅館でのウイルス感染(特に冬季)
つまり、「温泉は万能薬ではない」ということ。
喘息は医学的にコントロールすべき病気ですので、過信せず、主治医と相談しながらの利用が大切です
泉質別!どんな温泉が喘息やアトピーに合うの?
単純温泉(たんじゅんおんせん)
→ 成分が少なくて刺激が弱いのが特徴。
デリケートな肌や呼吸器にやさしく、敏感肌や喘息持ちの方にも安心して入れる“万人向け”の温泉です。
塩化物泉(えんかぶつせん)
→ ナトリウムを多く含み、入浴後に皮膚に薄い塩膜を作ることで水分蒸発を防ぎます。
保湿・保温効果が高く、乾燥による咳や皮膚のかゆみをやわらげたい人におすすめです。
炭酸水素塩泉(たんさんすいそえんせん)
→ いわゆる“美肌の湯”。肌の汚れや古い角質をやさしく落とし、ターンオーバーを促進します。
皮膚の炎症を抑えたいアトピーの方には相性がよいことがあります。
硫黄泉(いおうせん)
→ 強い殺菌効果があり、感染を伴う湿疹などに有効ですが、においや刺激が強めです。
喘息やアトピーの方には不向きな場合もあるため注意が必要です(皮膚や気道への刺激に敏感な方は避けましょう)。
放射能泉(ラジウム泉など)
→ 微量のラドンを含み、体内の免疫や自律神経を整えるという報告もあります。
ストレス性の喘息や慢性疲労のある方にはリラックス効果が期待される場合もあります。
温泉に入る前は「泉質」「温度」「入浴時間」を確認しましょう
アレルギーや心疾患がある方は、必ず医師の許可を得てくださいね
アトピーにも温泉がやさしい理由
ドラマの中で「黒い食材(ひじきなど)」を使った薬膳弁当が登場しましたが、
これと同じように、外側から肌をいたわるアプローチとして温泉が役立つことがあります
塩化物泉や炭酸水素塩泉は保湿効果が高く、皮膚バリアを補ってくれる
湯上がりにすぐ保湿剤を使うことで、効果が倍増します
温泉によるリラックスでかゆみ感が軽減されるケースも
アトピーに関しても「人による」ことを前提に、やさしく取り入れてみてください
まとめ|「温泉の力」は“自然の薬膳”かも
ドラマ『しあわせは食べて寝て待て』の世界では、
住む場所や食べるものを工夫することで、**「自分にとってのしあわせ」**を見つけていく姿が描かれていました
温泉もまた、自然の薬膳のような存在です
医学だけでは手の届かない「癒し」や「整える力」を感じることができるかもしれません。
でも、過信は禁物
喘息もアトピーも、基本は医学的治療と生活改善がベースです。
そのうえで「自然の力」を上手に取り入れていきましょう
ご質問やご相談があれば、どうぞお気軽に当院まで
患者さん一人ひとりに合った「整え方」、一緒に見つけていきましょう
やまぐち呼吸器内科・皮膚科クリニック
院長 山口裕礼
投稿者プロフィール

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からだ整えラボ 主宰
資格:
<医学・医療>医学博士、日本呼吸器学会認定呼吸器専門医、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医、日本喘息学会認定喘息専門医、日本内科学会認定内科医、日本喘息学会認定吸入療法エキスパート
<予防医学・代替医療・環境>
環境省 環境人材認定事業 日本環境管理協会認定環境管理士、漢方コーディネーター、内面美容医学財団公認ファスティングカウンセラー、日本セルフメンテナンス協会認定腸内環境管理士、腸内環境解析士、日本温活協会認定温活士、薬膳調整師、管理健康栄養インストラクター、食育健康アドバイザー、日本フェムテックマイスター協会公認フェムテックマイスター®上級、公認妊活マイスター®Basic、日本スキンケア協会認定スキンケアアドバイザー、メンタル士心理カウンセラー、アーユルヴェーダアドバイザー
<文化・生活>
日本園芸協会認定ローズ・コンシェルジュ、ローズソムリエ®(バラ資格)
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