翼で語りかけるシジュウカラ|静かな夜に聞こえた小さな声と“お先にどうぞ”のジェスチャー

やまぐち呼吸器内科・皮膚科クリニック 院長 山口裕礼です
こんばんは。
今日の診療をいつもより遅く終えたあと、
自宅で、ふと巣箱の前に立ち、しばらくボーッとしていました
日が暮れて、バラの香りが静かに広がる庭。
餌やりの時間はすでに終わっていて、親鳥の姿も見えません。
でも、巣箱に耳を傾けると――
「チ…チチ…」
そう、中からかすかにヒナの声が聞こえてきたのです
眠る直前の「ひと声」は、安心の証?
この静かな鳴き声は、
もしかすると「まだここにいるよ」「おなかすいたけど、がんばって寝るよ」
そんなささやかなサインかもしれません。
一日じゅう、親鳥がせっせと運んでくれたごはん。
小さな命たちはそれを受け取って、
今夜もまた、明日に向かって大きく育っていくのです
夜、ヒナはどこで眠るの?親鳥は一緒にいるの?
この素朴な疑問にお答えします
ヒナがまだ小さい時期(生後1週間ほどまで)は、母鳥が夜も一緒に巣箱の中にいて、ヒナを温めながら眠ります。
ただし、ヒナがある程度育って羽毛がそろい、自分で体温を保てるようになると、母鳥は夜間、外で過ごすようになります。
父鳥は基本的に夜は巣箱の中に入りませんが、日中の餌やりではフル稼働の“育メン”です
つまり、夜の静けさの中、ヒナたちは巣箱の中で寄り添って眠っていることがほとんど。
母鳥がいない夜も、ちゃんと「帰ってくる」ことを理解して、静かに待っているのです
今日のバラと巣箱の風景
巣箱のそばには、淡いラベンダーピンクのバラが咲いています
ライトアップされた巣箱とバラの共演は、まるで命を見守る舞台のようでした。

そして、白バラたち。

静けさとやさしさに包まれたこの時間に、思わず心が整います
東京大学の研究:シジュウカラは翼で“話す”
そんなシジュウカラについて、
実は今年、東京大学からとても興味深い研究発表がありました
なんと――
シジュウカラは「翼をパタパタと動かすジェスチャー」で“お先にどうぞ”という合図を送っているというのです
「つがい」のためのやさしい合図
観察によると、
つがいで巣箱に戻ってきたとき、片方(特にメス)が翼を小さくパタパタさせると、
もう片方(多くはオス)が先に巣箱に入るそうです
これは「順番を譲る」ための意図あるジェスチャー。
そして、単独の時にはこの動きは見られなかったとのこと。
つまりこれは、
“つがい”という関係性のなかでのみ現れる、思いやりの「しぐさ」なのです
翼は「飛ぶ」ためだけじゃない、「伝える」ためのものでもある
鳥の翼というのは、
単に空を飛ぶための器官ではありません。
ときに、
「今から入るね」
「先にどうぞ」
「気をつけてね」
そんな声にならないことばを、翼のうごきで伝える――
それがシジュウカラの知性なのです
今日のまとめ|静けさの中にある命の対話
餌やりの時間が終わった夜、巣箱の中から小さなヒナの声が聞こえた
東京大学の研究によって、シジュウカラが翼をジェスチャーとして使うことが判明
「お先にどうぞ」という思いやりが、つがいの間で交わされている
翼は飛ぶための道具であると同時に、伝えるための言葉でもある
命を感じる夜、心がほどける時間
忙しい日常のなかで、
こうした静かな時間に身を置くと、
自然が奏でる「ことばにならない対話」に耳をすませたくなります。
ヒナのかすかな声。
翼のやさしいジェスチャー。
バラの香りと灯り。
そのすべてが、今ここにある命の営みをそっと教えてくれるようでした
投稿者プロフィール

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資格:
<医学・医療>医学博士、日本呼吸器学会認定呼吸器専門医、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医、日本喘息学会認定喘息専門医、日本内科学会認定内科医、日本喘息学会認定吸入療法エキスパート
<予防医学・代替医療・環境>
環境省 環境人材認定事業 日本環境管理協会認定環境管理士、漢方コーディネーター、内面美容医学財団公認ファスティングカウンセラー、日本セルフメンテナンス協会認定腸内環境管理士、腸内環境解析士、日本温活協会認定温活士、薬膳調整師、管理健康栄養インストラクター、食育健康アドバイザー、日本フェムテックマイスター協会公認フェムテックマイスター®上級、公認妊活マイスター®Basic、日本スキンケア協会認定スキンケアアドバイザー、メンタル士心理カウンセラー
<文化・生活>
日本園芸協会認定ローズ・コンシェルジュ、ローズソムリエ®(バラ資格)
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