クリニックだより

今だからこそ知っておきたい‼ 緊急事態におけるコミュニケーション

CERC in an Infectious Disease Outbreak

災害医学の教科書のなかに、危機発生時のリスクコミュニケーションCrisis andEmergency Risk Communication (CERC)が取り上げられています(Reynolds et al. 2016)。

CERC は、World Health Organization (WHO)、Pan American Health Organization (PAHO),North Atlantic Treaty Organization (NATO)、米国疾病予防管理センター(Center for Disease Control (CDC))などで用いられている、災害発生後のコミュニケーションのあり方とそれを可能にする災害前の備えに関する方法論です。

CERC は災害時に不可欠な資源であり、心理学とコミュニケーション科学に基づいてメッセージ、伝達者、伝達方法を選択する方法です。

その目的は、さらなる疾病、外傷、死亡を防ぐこと、落ち着きを維持させる、あるいは取り戻すこと、そして、災害対応に関する信頼を創り出すことです。

1)初めが肝⼼(Be First)

感染症のアウトブレイクに関する情報を速やかに共有することで、感染症のまん延をくい⽌め、感染や死亡をも防いだり減らしたりすることに役⽴ちます。

多くの⼈々は緊急事態で⽿にする最初の情報を記憶しています。

だからこそ、初めに受け取る情報は健康や医療の専⾨家からもたらされるべきです。

・アウトブレイクや特定の感染症の原因が分からない場合であっても、まず⼊⼿可能な事実を共有しましょう。これによりうわさ話が先に広まらないようにするのに役⽴ちます。

・感染症によるサイン(徴候)と⾃覚症状、どのような⼈にリスクがあるのか、治療とケアの選択肢、そして受診する時期についての情報を共有しましょう。

2)正しい情報を(Be Right)

正確さが信頼性を決定づけます。

情報には、現時点でわかっていること、わかっていないこと、そしてその格差(ギャップ)を埋めるためになにがなされているのか、そして私たちにどんなことができるか、についての内容を含めるべきです。

・公衆衛⽣上の通知(メッセージ)と医療上の指針は、互いに補完し合うものでなければなりません。例えば公衆衛⽣当局は、もし医師が重篤な⼈を診療していて薬が尽き、診療に対応できないときには、広く⼈々に受診するように勧めるべきではありません

・常にその話題の専⾨家にファクトチェック(情報の吟味)を受けるべきです。なんらかの間違ったメッセージが有害な⾏動を引き起こし、将来のメッセージに対しての信頼を失うことになりかねません。

3)信頼を得る(Be Credible)

誠実で、時宜を得ており、そして科学的根拠があることが、受け⼿である⼈々の情報や指針への信頼を⾼めます。

問題に対して⼗分な回答をもっていないときは率直に認め、解決に向けて適切な専⾨家と連携しましょう。

・確かでないことについて、確約してはいけません。例えば利⽤可能性が確定していないのに、「ワクチンや治療薬が供給される」と断定してはいけません。

・臨床医は、報道や市⺠向けのイベントにおいて、医療上の質問に答えましょう。

4)共感を⽰す(Express Empathy)

感染症のアウトブレイクは恐怖と⽇常⽣活の破綻を引き起こすおそれがあります。

未知あるいは新興の感染症はさらに不確実さや不安をもたらします。

⼈々が何を感じているか、何を求めているかを認識することは、推奨を⾏うときに受け⼿の⼈々の視点を考慮していることの裏付けになります。

・例えば、2018年のインフルエンザシーズンでの記者会⾒において、CDC(⽶国疾病予防管理センター)の⻑官代理は、「私は、多くのメディアの⽅々がこのインフルエンザシーズンについて⼼配しており、愛する⼈を失った胸が張り裂けるような話に接していることを理解しています。」と述べました。

5)⾏動を促す(Promote Action)

感染症のアウトブレイクにおいては、予防についての⼈々の理解と⾏動が、まん延をくい⽌めるための鍵になります。

・⾏動のメッセージは簡潔に、短く、覚えやすいものにしましょう。例えば、「咳エチケット」などです。

・障がいのある⼈や、外国語を使⽤する⼈など、情報へのアクセスが困難である⼈へもさまざまな⽅法で確実にメッセージが伝わるようにする必要があります。

6)敬意を⽰す(Show Respect)

無防備であると感じたときこそ、敬意のこもったコミュニケーションがとりわけ重要です。

敬意を伴うコミュニケーションは、協調関係と相互理解を促します。

地域のコミュニティや地域のリーダーシップによりもたらされた課題や解決策について、積極的に⽿をかたむけましょう。

・病気に対する⽂化的な信条や考え⽅、対応の違いがあることを踏まえて対応しましょう。相互の理解を促し、コミュニティと連携しましょう。

・恐怖や⼼配から⽬をそらしてはいけません。話し合いや質問の機会を設けましょう。

出典:感染症のアウトブレイクによる危機と緊急事態におけるリスクコミュニケーション
(メディアドクター研究会仮訳)2020年2⽉26⽇作成 ver1.0

原⽂/original:CERC in an Infectious Disease Outbreak

私たちができること

投稿者プロフィール

院長:山口裕礼(やまぐちひろみち)
院長:山口裕礼(やまぐちひろみち)
2017年1月、希望が丘(神奈川県横浜市)にて、やまぐち呼吸器内科・皮膚科クリニックを開院しました。