クリニックだより

90歳の患者さんからの言葉に込められた意味

患者さんからの言葉に込められた意味

本日、90歳くらいの患者さんがいつものように定期的な診察にいらっしゃいました。

その際、その方がこんな言葉をかけてくださいました。

「先生は素晴らしい人ですね。多くの先生を見てきたからわかります。とても安心します。」

正直に申し上げると、私は自分が「素晴らしい人」だとは思っていません。

医師として日々努力しているつもりですが、それ以上でも以下でもないと感じています。

ただ、患者さんにとって少しでも安心できる存在になれているのであれば、それ以上に幸せなことはありません。

一方で、このように感じない患者さんがいらっしゃることも、当然あると思います。

医師としての接し方が患者さん一人ひとりの状況や期待に必ずしも応えられているとは限りません。

そのため、日々の診療では、患者さんそれぞれが抱える不安や期待を丁寧にくみ取り、最善の対応を心がけています。

言葉の重みと背景

90歳という年齢を迎えるまでに、その方はたくさんの医師や看護師と出会い、さまざまな経験を重ねてきたはずです。

その中で「安心できる」と感じてくださるのは、単なる技術や知識の問題だけではありません。

むしろ、患者さんと医療者の間にある信頼関係、そして心の通った対話がその安心感の土台となっています。

ただし、「安心」という言葉の感じ方は人それぞれです。

医療者として完璧を目指すことは重要ですが、患者さんにとっての安心感は、その方の人生経験や価値観に大きく左右されることを忘れてはなりません。

患者さんの安心が意味すること

「安心」という言葉は、病院や診察室において特別な価値を持ちます。

病気や不調を抱える中で、人はどうしても不安定になりがちです。

その中で、患者さんが安心感を持てる医療者に出会えることは、治療の一部ともいえます。

しかし、それがすべての患者さんに共通するとは限りません。

一部の患者さんにとっては、診察が負担になることもあり、医療者として常にその点を心に留め、寄り添う姿勢を持ち続ける必要があります。

日々の言葉のやり取りが持つ価値

このエピソードは、患者さんとの日々のやり取りが、医療者としての私たちにどれほどの影響を与えているかを再認識させてくれます。

私たちは診察室での言葉を日常の一部として受け取ってしまうことがありますが、それが患者さんにとっては「心を支える瞬間」になっている場合もあるのです。

「相手の存在を認め、安心を提供する」こと。

それは特別な資格や技術がなくても誰にでもできることです。

今日お話ししたエピソードが、少しでも皆さんの日常に優しい気持ちを生むきっかけになれば幸いです。

診察室で患者さんからいただく言葉は、医師としての私にとっても心の支えです。

そしてその言葉を通して、私はさらに努力を続けていこうと決意を新たにしています。

これからも、患者さんにとって安心できる存在であり続けられるよう努めていきます。

やまぐち呼吸器内科・皮膚科クリニック 山口裕礼


投稿者プロフィール

院長:山口裕礼(やまぐちひろみち)
院長:山口裕礼(やまぐちひろみち)
2017年1月、希望が丘(神奈川県横浜市)にて、やまぐち呼吸器内科・皮膚科クリニックを開院しました。