クリニックだより

8月の背景

〈コメント〉

8月の夜空にあがる大小の花火を
浴衣の柄のようなハンコ風のタッチで表現しました。

ひとつだけ変わり種花火がまざっています。

irodori

春はあけぼの、夏は夜。

そう昔の人が書いたように、

真夏の夜は

深く、

青く、

何だか特別なもののように感じられます。

そんな夏を

よりいっそう思い出深いものにしてくれるのが、

何と言っても「花火」です。

華やかな音を立てて

夜空に咲き誇る

色とりどりの花火を眺めていると、

まとわりつくような暑さも

日ごろの悩みも

何もかも、

きれいさっぱり

消えてしまうのではないでしょうか。

夏祭りの騒がしさの中、

絶え間なく打ち上げられる無数の花。

屋台での作業に精を出しているお父さんも、

ケンカしていた浴衣姿の恋人達も、

「ママ、焼きそば買って~!」

だだをこねていたちびっ子も、

思わず手を止め足を止め、

呼ばれたかのように

そろって群青の空を見上げます。

最後の最後に打ち上げられた

遊び心あふれる花火に

ついついぷっと噴き出すと、

花火と同じように、

笑顔になっている自分に気づくはず。

誰からともなく、

拍手と歓声が巻き起こります。

火の消えていく

ぱらぱらという音が、

再び夜の静けさと、

かすかな夏の終わりを連れてきます。

小泉ちはる